メラトニン(個人輸入・自費処方)
「体内にあるホルモンだから安全」は入口として正しい。出口で問題になるのは、効果が数分単位であることと、輸入した錠剤に何mg入っているか誰も保証していないことです。
メラトニンは体内時計に関わるホルモンで、海外ではサプリメントとして売られ、日本では医薬品成分です。19試験1,683人のメタ解析で、寝つくまでの時間は平均7.1分短縮、総睡眠時間は8.3分延長、睡眠の質はわずかに改善(SMD 0.22)。成人の慢性不眠に限ると「有意な効果なし」とした2022年のメタ解析もあり、154試験のネットワークメタ解析はメラトニンとラメルテオンを「実質的な利益を示さなかった」としました。国内で承認されたメラトニン製剤(メラトベル)は小児の神経発達症に伴う入眠困難だけが適応で、成人は未承認品を医師が個人輸入して処方します。輸入サプリ31製品の分析では含量が表示の−83%〜+478%で、71%が±10%を外れ、26%にセロトニンが混入していました。国内で入手できる8製品でも規格を満たしたのは1製品でした。60錠(2か月分)で3,300〜7,700円です。
① 国内で承認されている使い方
メラトニンは日本では「専ら医薬品として使用される成分」に区分され、サプリメントとして販売できません。国内承認薬はメラトベル(ノーベルファーマ、2020年)で、適応は6〜15歳の神経発達症に伴う入眠困難のみ。成人の不眠への処方は、海外のサプリメント・医薬品を医師が個人輸入して行う自由診療です。承認された代替薬として、メラトニン受容体作動薬ロゼレム(ラメルテオン)が不眠症の適応で保険で使えます(別ページ「睡眠薬・睡眠美容」参照)。
② 臨床試験で確かめられていること
寝つき: 数分〜十数分早まります。「効かない」ではありませんが、睡眠薬の効果より小さい。
夜中の目覚め・総睡眠時間: ほぼ変わりません(+8分)。
年齢: 55歳以上では睡眠効率の改善が大きい(Maruani 2023、+2.95%)。加齢で体内のメラトニン分泌が減ることと関係すると説明されています。
用量と時間: 26試験の用量反応解析では、効果は1日4mgで頂点に達し、飲む時刻(就寝までの間隔)も効果に関係しました。増やすほど効く薬ではありません。
- 誰に
- 一次性睡眠障害の成人・小児1,683人(19の無作為化プラセボ対照試験)
- 何を
- メラトニン内服
- 何と比べて
- プラセボ
- どうなった
- 入眠潜時 −7.06分(95%CI 4.37〜9.75)、総睡眠時間 +8.25分(1.74〜14.75)、睡眠の質 SMD 0.22(0.12〜0.32)。用量が多く期間が長いほど効果大。「絶対的な利益は他の薬より小さいが、副作用が少ない」
- 誰に
- 慢性不眠の小児〜成人(24の無作為化試験)/不眠症の成人(154の二重盲検無作為化試験、30の介入)
- 何を
- メラトニン
- 何と比べて
- プラセボ・他の睡眠薬
- どうなった
- Choi: 併存症のない成人では入眠潜時・総睡眠時間・睡眠効率に有意な効果なし。小児・思春期では有効。De Crescenzo: 承認された睡眠薬の多くに効果が示された一方、「メラトニン、ラメルテオン、未承認薬は全体として実質的な利益を示さなかった」
- 誰に
- 不眠症の成人4,875人(22試験、メラトニン925人・ラメルテオン1,804人)
- 何を
- 徐放性メラトニン/ラメルテオン
- 何と比べて
- プラセボ
- どうなった
- 徐放性メラトニン: 主観的入眠潜時−6.30分、客観的−5.05分、睡眠効率+1.91%。55歳以上では睡眠効率+2.95%(大きい効果量)。ラメルテオン: 4週で客観的総睡眠時間+17.9分。「メラトニンは小〜中程度、ラメルテオンはより大きい効果」
- 誰に
- 北米で市販の31製品/日本で入手できる8製品
- 何を
- メラトニンサプリメントの含量・溶出試験
- 何と比べて
- 表示量・医薬品の規格
- どうなった
- 北米: 含量は表示の−83%〜+478%、71%超が±10%外、ロット間で最大465%の差、26%にセロトニン混入。日本: 含量81.5〜121.8%で規格(95〜105%)を満たしたのは8製品中1製品、15分85%の溶出基準を満たしたのは3製品。日本の報告はPDFの一部が文字化けし、判読できた数値のみ
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
- 誰に
- 6〜15歳の神経発達症(自閉スペクトラム症等)に伴う入眠困難
- 何を
- メラトニン1mg(最大4mg)を就寝前
- 何と比べて
- プラセボ(承認時試験)
- どうなった
- 承認時の二重盲検試験(6〜15歳の自閉スペクトラム症、投与2週間後): 入眠潜時の変化の中央値はプラセボ−5.0分、1mg群−22.0分、4mg群−28.0分。「6歳未満又は16歳以上における有効性及び安全性は確立していない」。3か月で評価し漫然と投与しない。中止で症状悪化の可能性。副作用: 傾眠4.2%、頭痛。禁忌: フルボキサミン併用
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 成人の不眠症での効果。メタ解析で結論が割れています(小さい効果 vs 効果なし)。
- 年単位の長期使用の安全性。試験の多くは数週間〜数か月です。
- 日本で自費処方されている輸入製品の含量と品質。2018年の8製品の報告以降、当サイトは新しい調査を確認していません。
- 「抗酸化」「抗がん」目的の高用量(20〜60mg)のヒトでの効果と安全性。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 高用量、就寝直前ではなく夜中に飲んだ人、高齢者。
- 起こる時期
- 翌朝。
- 備え
- 承認薬で傾眠4.2%。運転に注意。用量を減らす。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。
- 起こる時期
- 服用後〜翌日。
- 備え
- 多くは軽度。続くなら中止。
- 起こりやすい人
- 輸入サプリを使うすべての人。
- 起こる時期
- 服用中ずっと。
- 備え
- 表示の−83〜+478%、セロトニン混入26%(北米)。国内入手8製品で規格適合1製品。効かない・効きすぎの原因になります。
- 起こりやすい人
- 抗うつ薬フルボキサミンなどを飲んでいる人。
- 起こる時期
- 併用中。
- 備え
- フルボキサミンは承認薬で禁忌。医師に全ての薬を申告。
- 起こりやすい人
- 成人の慢性不眠、睡眠時無呼吸・うつ・薬の影響による不眠。
- 起こる時期
- 数週間〜。
- 備え
- 効果は数分単位。不眠の原因(無呼吸・うつ・カフェイン・薬)を調べずに続けないこと。
- 起こりやすい人
- 長期に使った人。
- 起こる時期
- 中止後数日〜。
- 備え
- 承認薬は「中止で睡眠障害の悪化」を注意喚起。徐々に減らす。
⑤ やめるとき
承認薬は3か月で有効性を評価し、効かなければ中止。成人の自費処方に終わりの目安はありません。
いつでもやめられます。承認薬は「中止で睡眠障害の悪化」を注意喚起しており、長期使用後は徐々に減らすのが無難です。
寝つきは元に戻ります。依存性はベンゾジアゼピン系より低いとされます。
2か月分ごとの購入が上限(個人輸入の規則)。まとめ買いはできません。
⑥ 価格
A施設は米国製3mg 60粒7,700円(2か月分、初診無料、医師の個人輸入と明記)。B施設は3mg 60錠3,300円、5mg 100錠5,940円、10mg 6,270円、20mg 10,516円、60mg 12,650円、初診3,300円、送料550円。C施設は2か月分3,300円(税別、妊活目的の処方)。同じ3mg 60錠で最安と最高が約2.3倍。3施設の確認で、相場ではありません。
未承認品なので薬価はなく、表示価格がすべてです。参考として、承認薬メラトベル錠1mg(小児の適応のみ)の薬価は103.9円/錠です。海外ではサプリメントとして安価に売られている成分で、自費処方の価格の多くは診察・輸入・利益です。含量が保証されない製品に月1,650〜3,850円を払う構図を、承認薬ロゼレム(保険)と比べてください。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 処方されるメラトニンはどこの国のどの製品で、含量の分析証明はありますか。国内承認薬ではなく個人輸入品だと理解しています。
- 私の不眠は入眠困難ですか、中途覚醒ですか。メラトニンが効くのは入眠で、効果は数分〜十数分だと聞きましたが、私に勧める理由は。
- 承認薬のロゼレム(ラメルテオン、保険)ではなく輸入メラトニンを選ぶ理由は何ですか。
- 私が飲んでいる薬(特に抗うつ薬のフルボキサミン)との相互作用は確認しましたか。
- 何mgを何時に飲み、何か月で効果を判定しますか。効かなかったらどうしますか。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- Ferracioli-Oda E, Qawasmi A, Bloch MH. PLoS One. 2013;8(5):e6377319試験1,683人。入眠潜時−7.06分、総睡眠時間+8.25分、質SMD 0.22。PubMed抄録で確認
- Choi K, et al. Sleep Med Rev. 2022;66:101692/De Crescenzo F, et al. Lancet. 2022;400(10347):170-184/Maruani J, et al. J Sleep Res. 2023;32(6):e13939/Cruz-Sanabria F, et al. J Pineal Res. 2024;76(5):e12985成人非併存不眠で効果なし、NMAで実質的利益なし、徐放性メラトニンの小〜中効果、用量反応(4mg・3時間前)。PubMed抄録で確認
- Erland LA, Saxena PK. J Clin Sleep Med. 2017;13(2):275-28131製品。含量−83〜+478%、71%が±10%外、セロトニン26%。PubMed抄録で確認
- 脳と発達 2018;50(5):364-(短報「本邦で入手できるメラトニンサプリメントの評価」、J-STAGE)国内入手8製品のHPLC含量・溶出試験。規格適合1製品、溶出基準適合3製品。PDF原文を取得したが埋め込みフォントで一部文字化け、判読できた数値のみ引用
- メラトベル顆粒小児用0.2%/錠小児用1mg・2mg 添付文書(KEGG MEDICUS収載版で確認)効能(小児期の神経発達症に伴う入眠困難)、16歳以上未確立、用量1〜4mg、3か月評価、中止時の悪化、傾眠4.2%、フルボキサミン禁忌、薬価103.9円/155.9円
- 厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」2か月分以内(処方箋薬は1か月分)、他人への譲渡禁止、救済制度の対象外。原文ページを確認。「専ら医薬品として使用される成分」への該当は検索結果で二次確認
- 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、3施設)3mg 60錠7,700円(米国製・個人輸入)、3,300〜12,650円(3〜60mg)、2か月3,300円税別(妊活目的)。施設名は扱いません