帯状疱疹ワクチン(任意接種・定期接種)
自由診療の中で、これほど大規模な試験で効果が示されているものは多くありません。論点は「効くか」ではなく、「自費で今受けるか、定期接種の年齢まで待つか」と「痛い副反応を引き受けるか」です。
帯状疱疹を防ぐワクチンは2種類です。組換えワクチン(シングリックス、2回筋注)は50歳以上15,411人の試験で発症を97.2%、70歳以上13,900人で89.8%減らし、帯状疱疹後神経痛を88.8%減らしました。接種後5〜11年の期間でも79.8%、11年目で82.0%の効果が残っています。生ワクチン(1回皮下注)は60歳以上38,546人の試験で51.3%、5年を超えると効果が落ちます。副反応は組換えワクチンで注射部位の痛み79.1%、筋肉痛36.9%、疲労34.6%、発熱16.7%と多く、多くは数日で治ります。2025年4月から65歳(経過措置で70〜100歳の5歳刻み)は定期接種となり自治体の助成が出ます。それ以外は任意接種で、組換えワクチンは1回22,000円×2回、生ワクチンは8,000〜8,470円です。
① 国内で承認されている使い方
帯状疱疹ワクチンは2種類とも国内承認です。乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」(阪大微研)は50歳以上の帯状疱疹の予防の効能を持ち、1回皮下注射。シングリックス(GSK、2018年承認)は50歳以上と、18歳以上で帯状疱疹のリスクが高い人に2回筋注。2025年4月から65歳等は予防接種法のB類定期接種となり自治体が費用を一部負担、それ以外は任意接種で全額自費です。どちらも薬価基準には収載されていません。
② 臨床試験で確かめられていること
発症予防: 組換えワクチンで9割、生ワクチンで5割。差は大きく、Cochraneも両者を比較して組換えの優位を示しています。
帯状疱疹後神経痛(長引く痛み)の予防: 組換え89%、生67%。ワクチンの最大の価値はここにあります。
持続: 組換えは11年で8割の効果が残り、生は5年で4割に落ちます。
副反応: 組換えは痛みと全身症状が多く、1〜3日仕事に影響することがあります。2回目のほうが強いことが多い。「痛いが効く」ワクチンです。
- 誰に
- 50歳以上15,411人/70歳以上13,900人(無作為化・プラセボ対照)
- 何を
- シングリックス(HZ/su)2回筋注
- 何と比べて
- プラセボ
- どうなった
- 発症予防効果: 50歳以上97.2%(93.7〜99.0、追跡3.2年)、70歳以上89.8%(84.2〜93.7、追跡3.7年)、80歳以上でも89.1%。帯状疱疹後神経痛(70歳以上、統合)88.8%(68.7〜97.1)。注射部位・全身反応は79.0% vs 29.5%、グレード3は17.0% vs 3.2%
- 誰に
- ZOE-50/70の参加者7,273人(初回接種時平均67.3歳)
- 何を
- シングリックス(追加接種なし)
- 何と比べて
- —(過去のプラセボ群の発症率との比較)
- どうなった
- 追跡期間(接種後約5〜11年)の効果79.8%(73.7〜84.6)、70歳以上では73.2%(62.9〜80.9)。11年目でも82.0%(63.0〜92.2)。2回目接種1か月後〜11年の累積効果87.7%(84.9〜90.1)。帯状疱疹後神経痛87.5%(64.8〜96.8)
- 誰に
- 60歳以上38,546人(無作為化・二重盲検)
- 何を
- 弱毒生ワクチン1回皮下注
- 何と比べて
- プラセボ
- どうなった
- 発症51.3%減、疾病負荷61.1%減、帯状疱疹後神経痛66.5%減。注射部位の反応はワクチン群で多かった
- 誰に
- 60歳以上90,259人(26研究、平均63.7歳)/無作為化試験と観察研究のネットワークメタ解析/実臨床の観察研究のメタ解析
- 何を
- 生ワクチン/組換えワクチン
- 何と比べて
- プラセボ・相互
- どうなった
- Cochrane: 生RR 0.49(NNT 50)、組換えRR 0.08(0.03〜0.23、NNT 33)、重篤有害事象・死亡に差なし、組換えは局所反応RR 6.89・全身RR 2.23。Xia: 組換えの生に対する相対効果84%(53〜95)。Mbinta: 実臨床で生45.9%、組換え79.2%。PubMed抄録で確認
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
- 誰に
- 65歳、60〜64歳のHIVによる免疫障害、経過措置の70〜100歳(5歳刻み、2025〜2029年度)
- 何を
- 生ワクチン1回または組換えワクチン2回
- 何と比べて
- —
- どうなった
- B類疾病の定期接種(努力義務なし)。有効性の目安: 生1年6割・5年4割、組換え1年9割以上・5年9割・10年7割。費用は自治体による。接種できない人: 成分でアナフィラキシーを起こした人など
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 組換えワクチンの11年以降の持続と、追加接種の要否。
- 50代で自費で受けた場合と、65歳の定期接種まで待った場合の、生涯の発症・神経痛・費用の比較。
- 認知症・心血管疾患の減少(観察研究・自然実験で報告)が因果かどうか。
- 日本人での副反応の頻度(国内の添付文書データは海外試験が中心)。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。組換えで疼痛79.1%、発赤37.4%。
- 起こる時期
- 接種当日〜3日。
- 備え
- 2回目で強いことが多い。冷やす、腕を動かす。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。組換えで筋肉痛36.9%、疲労34.6%、発熱16.7%。
- 起こる時期
- 接種当日〜3日。
- 備え
- 仕事や予定のない日に接種を。解熱鎮痛薬で対応可。
- 起こりやすい人
- 成分への過敏症。頻度不明。
- 起こる時期
- 接種直後〜30分。
- 備え
- 接種後15〜30分は施設で待機。
- 起こりやすい人
- 頻度不明(添付文書の重大な副反応)。
- 起こる時期
- 接種後数週間。
- 備え
- 手足の力が入らない・しびれが広がるときは受診。
- 起こりやすい人
- 免疫抑制状態の人(禁忌)。
- 起こる時期
- 接種後数週間。
- 備え
- 生ワクチンは免疫不全に禁忌。組換えを選ぶ。
- 起こりやすい人
- 生ワクチンを受けた人、高齢者。
- 起こる時期
- 5年〜。
- 備え
- 生は5年で4割(厚労省)。組換えを追加で受けるかは医師に相談。
⑤ やめるとき
組換えは2回で完了(2か月間隔)。生は1回。追加接種の推奨は当サイトでは確認していません。
2回目を受けないと組換えワクチンの効果は確立しません(試験は2回接種)。1回目後の中断は「効果不十分」と考えてください。
効果は組換えで11年以上、生で5年程度続き、その後徐々に落ちます。
1回ごとの支払い。2回目の価格が同じかを最初に確認。定期接種の対象になる年に自費で受けると助成を使えません。
⑥ 価格
A施設は組換え22,000円/回(2回44,000円)、説明のみは初診3,300円。B施設は組換え22,000円/回、生ワクチン8,470円。C施設は組換え自費22,000円・公費10,000円、生ワクチン自費8,000円・公費4,000円。組換えは3施設とも22,000円で横並び、生ワクチンは8,000〜8,470円。定期接種の自己負担は自治体で異なります。3施設の確認で、相場ではありません。
ワクチンは薬価基準に収載されておらず、公定価格がありません。自費価格は横並びで施設差より「定期接種の年齢に当たるか」で自己負担が2倍以上変わります。65歳の定期接種を待つ間の発症リスク(50代から上がる)と、今自費で受ける44,000円を天秤にかける判断です。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 私は定期接種の対象年齢ですか(65歳、経過措置の70〜100歳)。対象なら自治体の助成額と、自費との差はいくらですか。
- 生ワクチンと組換えワクチンのどちらを勧めますか。私の持病(免疫抑制薬・がん治療)で生ワクチンは禁忌ですか。
- 組換えワクチンは2回で44,000円、副反応で1〜3日つらいことがあると聞きました。2回目の日程はどう組みますか。
- 帯状疱疹にかかったことがあります。いつから接種できますか。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- 厚生労働省「帯状疱疹ワクチン」(定期接種の案内ページ)2025年度から65歳等が定期接種、経過措置、B類、2種類のワクチンの回数・有効性の目安(生: 1年6割・5年4割、組換え: 1年9割以上・5年9割・10年7割)、費用は自治体。原文ページを確認
- シングリックス筋注用 添付文書情報(日経メディカル処方薬事典の収載情報で確認)/乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」添付文書(KEGG MEDICUS収載版で確認)シングリックス: 効能(50歳以上、18歳以上高リスク)、用法2回、副反応の頻度、重大な副反応(ショック・アナフィラキシー・GBS)、薬価基準未収載。ビケン: 効能(水痘、50歳以上の帯状疱疹)、1回皮下、免疫不全禁忌、重大な副反応(アナフィラキシー・血小板減少・無菌性髄膜炎)
- Lal H, et al. N Engl J Med. 2015;372(22):2087-2096/Cunningham AL, et al. N Engl J Med. 2016;375(11):1019-1032ZOE-50(97.2%)、ZOE-70(89.8%、PHN 88.8%)、グレード3反応17.0%。PubMed抄録で確認
- Strezova A, et al. EClinicalMedicine. 2025;83:10324111年追跡。79.8%、累積87.7%、PHN 87.5%。PubMed抄録で確認
- Oxman MN, et al. N Engl J Med. 2005;352(22):2271-2284生ワクチン38,546人。51.3%、PHN 66.5%。PubMed抄録で確認
- de Oliveira Gomes J, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2023;10:CD008858/Xia Y, et al. Front Immunol. 2022;13:978203/Mbinta JF, et al. Lancet Healthy Longev. 2022;3(4):e263-e275Cochrane(RR 0.49/0.08、NNT 50/33)、NMA(相対効果84%)、実臨床(45.9%/79.2%)。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- Taquet M, et al. Nat Med. 2024;30(10):2777-2781/Pomirchy M, et al. JAMA. 2025;333(23):2083-2092認知症リスク低下の観察研究・自然実験(因果は未確定)。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、3施設)組換え22,000円/回、生8,000〜8,470円、公費10,000円/4,000円の例。施設名は扱いません