ヒアルロン酸注入
製剤ごとに承認の有無と持続期間が違います。血管に入った場合の合併症が、この治療でもっとも重い問題です。
充填の効果自体は確立しています。この治療で確かめるべきは効果より、まれで重い合併症への備えです。
① 国内で承認されている使い方
国内で承認された製剤には、効能・効果と使用できる部位の定めがあります。未承認の製剤も流通しています。
② 臨床試験で確かめられていること
しわ・たるみに対する効果については、比較試験と長期の観察研究があります。
持続期間は製剤の架橋度と注入部位によって異なります。同じ「ヒアルロン酸」でも一律ではありません。
注入直後の見た目と、腫れが引いたあとの見た目は異なります。
- 誰に
- ほうれい線などの充填で承認された製剤の、承認審査の試験参加者
- 何を
- ヒアルロン酸製剤の皮下注入
- 何と比べて
- 注入前の状態、または対照製剤
- どうなった
- ふくらませて溝を浅くする効果自体は確立しています。この治療で本当に確かめるべきは効果ではなく、下の合併症への備えです
- 誰に
- 1906年〜2023年3月に世界で報告された、顔への注入による失明 511症例
- 何を
- 原因となった製剤・注入部位・視力の転帰を集計(比較試験ではなく、症例の集積です)
- 何と比べて
- —(対照群はありません)
- どうなった
- 直近365件の79.6%がヒアルロン酸。視力が回復しなかった例 68.2%、完全回復 6.0%。部位は鼻 40.6%/前額 27.7%/眉間 19.0%。発症の大多数は注入直後〜10分以内
「何回の注入に1回起きるか」はこのデータからは分かりません。分母(総注入件数)が存在しないためです。まれであることは確かですが、起きたときに戻らない——リスクの質が他の美容医療と違います。
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 遅発性の結節や腫脹が、どのくらいの頻度で起きるか。
- 繰り返し注入した場合の長期的な影響。
- 製剤ごとの合併症の頻度の違い。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 鼻・眉間・ほうれい線など、血管の走行に近い部位への注入。
- 起こる時期
- 注入中〜直後。皮膚の白変・網状の変色・強い痛みが警告サインです。
- 備え
- 疑ったら即座に溶解剤(ヒアルロニダーゼ)で対応します。院内に常備しているかを事前に確かめてください。
- 起こりやすい人
- 同じく鼻(報告の40.6%)・額(27.7%)・眉間(19.0%)への注入。
- 起こる時期
- 大多数が注入直後〜10分以内。片目の視力低下・激しい眼痛が起きたら一刻を争います。
- 備え
- 1906年以降の報告511件のうち、完全回復は6.0%でした。0.2mL以下の少量でも起きています。
- 起こりやすい人
- ヒアルロン酸「以外」の充填剤(アクアミド等)を注入された人。
- 起こる時期
- トラブルが起きたとき、溶解という選択肢がなくなります。
- 備え
- 「ヒアルロン酸ですか」という確認が、あとから効く保険になります。
- 起こりやすい人
- 誰にでも起こりえます。感染や免疫反応が関与するとされます。
- 起こる時期
- 注入から数か月後に突然現れることがあります。
- 備え
- 時間がたってからの腫れも、注入歴とあわせて受診時に伝えてください。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。血液をサラサラにする薬の服用者は出やすい。
- 起こる時期
- 注入直後〜数日。
- 備え
- 大事な予定の直前は避けるのが無難です。
⑤ やめるとき
持続は製剤と部位で数か月〜1年以上と幅があります。維持するなら再注入が前提です。
やめられます。ヒアルロン酸なら、気に入らない場合に溶解剤で戻す選択肢もあります(ヒアルロン酸以外は溶かせません)。
吸収されて徐々に元に戻ります。繰り返し注入した部位の長期変化は、よく調べられていません。
都度払いが基本です。溶解にも別途費用がかかることが多いので、「入れる値段」と「戻す値段」の両方を確かめてください。
⑥ 価格
確認した範囲で約3.7倍。製剤(承認品か否か・持続の長さ)が違うため、同じ物の差ではありません。
10,000円刻みの度数。検索から集めた便宜標本で、全国の割合には一般化できません。同じ単位に換算できないページは台帳から除いています。詳しい方法と5治療の横断は横断価格レポートに。
美容用製剤は保険収載されておらず公定価格はありません。安さで選ぶ前に、製剤名と、溶解剤の常備、緊急時の対応を確かめてください。この治療では価格より備えが判断材料です。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 注入する製剤の名前を教えてください。ヒアルロン酸ですか。国内で承認されたものですか。
- その製剤は、注入する部位に対して承認されていますか。
- 血管に入った場合に備えて、溶解する薬(ヒアルロニダーゼ)は院内にありますか。
- 視力の異常や強い痛みが出たとき、すぐに連絡できますか。夜間・休診日はどうなりますか。
関連する読みもの
note で読む
この治療について、悩みの側から追った連載記事があります。ヒアルロン酸注入で失明する確率は——「確率」より先に確かめる3つの備え(note.com/外部サイト)出典
最終確認日 2026-08-18/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- Doyon VC, et al. Update on Blindness From Filler. Aesthet Surg J. 2024;44(10):1091-11041906年から2023年3月までに公表された失明症例のレビュー。発症は大多数が注入直後から10分以内
- PMDA 医療機器・医薬品承認情報製剤名から承認の有無と承認された部位を確認できます
- 医薬品副作用被害救済制度(PMDA)個人輸入により入手した製剤は対象外です
- 当サイト調査(観測日 2026-08-18)公開ページに掲載されていた価格の幅