イソトレチノイン内服(重症ニキビ)
効く薬です。だからこそ「誰に使うか」と「妊娠をどう避けるか」が、価格より先に来ます。
海外では40年以上使われ、重症の結節性ニキビへの効果は試験で示されています。日本では未承認で、皮膚科学会のガイドラインは推奨の対象にしていません。論点は効果の有無ではなく、催奇形性の管理と、軽いニキビにまで使われている現状です。
① 国内で承認されている使い方
日本では医薬品として承認されていません。クリニックが医師の責任で海外製品(アクネトレント、イソトロインなど)を個人輸入して処方しています。未承認薬のため、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。
② 臨床試験で確かめられていること
効果の「有無」は争点になっていません。40年の使用実績と31の無作為化試験があります。争点は「誰に、どこまで」です。
経口抗菌薬+外用薬と比べたとき、炎症性皮疹の数は同じ程度に減り、医師の総合評価ではやや優れる、というのがCochraneの統合結果です。圧倒的な差ではありません。
1コース(15〜20週)で「完全かつ持続的な寛解」が得られると米国の添付文書は述べています。中止後も改善が続く人がいる一方、再発して2コース目が必要になる人もいます。
美容目的でうたわれる「皮脂が減る」「毛穴が小さくなる」は、承認された適応の外にあり、当サイトはその効果を測った試験を確認できていません。
- 誰に
- 12〜55歳の痤瘡患者。レビュー全体で31試験・3,836人。この比較は3試験・400人
- 何を
- イソトレチノイン内服(用量は試験ごとに異なる)
- 何と比べて
- 経口抗菌薬+外用薬
- どうなった
- 炎症性皮疹数の減少(治療終了時): RR 1.01(95%CI 0.96〜1.06)で差なし。医師による全般改善: RR 1.15(1.00〜1.32)。軽い副作用: RR 1.67(1.42〜1.98)で多い。エビデンスの質は低〜非常に低
- 誰に
- 同レビュー内で用量や間欠投与を比べた14試験・906人
- 何を
- イソトレチノインの各用量(低用量・間欠投与など)
- 何と比べて
- 標準用量など
- どうなった
- 重篤な副作用の報告は14試験・906人でなし。軽い副作用は13試験・858人で解析。用量による効果の差は試験の質が低く断定できない
- 誰に
- 重症結節性痤瘡の患者(承認時の臨床試験に基づく記述)
- 何を
- 0.5〜1mg/kg/日、15〜20週
- 何と比べて
- 対照群なし(添付文書の記述)
- どうなった
- 「15〜20週の1コースで完全かつ持続的な寛解」。2コース目は終了後8週以上あけてから。中止後も改善が続く人がいる
- 誰に
- 日本人を対象にした承認申請のための試験を探しました
- 何を
- イソトレチノイン内服
- 何と比べて
- プラセボまたは標準治療
- どうなった
- 確認できませんでした。日本皮膚科学会のガイドラインも未承認薬として採用していません。海外データを日本人に当てはめて処方されているのが実態です
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 日本人での適切な用量と副作用の頻度。海外の体重あたり用量をそのまま当てはめてよいかは測られていません。
- 軽症〜中等症への低用量・長期使用の益と害。承認された使い方の外側で、データが薄い領域です。
- うつ・自殺念慮との因果関係。添付文書は警告していますが、疫学研究の結果は割れています。
- 炎症性腸疾患との関連。添付文書に記載がありますが、因果は確定していません。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 妊娠する可能性のあるすべての人。年齢や妊娠歴は関係ありません。
- 起こる時期
- 服用中と、中止後1か月以内の妊娠。
- 備え
- 米国は開始1か月前から終了1か月後まで2種類の避妊と毎月の妊娠検査を義務化しています(iPLEDGE)。日本にこの仕組みはありません。避妊の方法と妊娠検査の頻度を、処方前に決めてください。
- 起こりやすい人
- ほぼ全員。用量が多いほど強く出ます。
- 起こる時期
- 開始から数日〜数週間で始まり、服用中は続きます。
- 備え
- 口唇炎はこの薬の目印です。リップクリーム・保湿・コンタクトの不快感への備えを。ひび割れて出血するなら減量の相談を。
- 起こりやすい人
- 脂質異常のある人、肥満の人、飲酒の多い人で出やすいとされます。
- 起こる時期
- 開始後数週間。米国の添付文書は反応が定まるまで週1〜2回の血液検査を求めています。
- 備え
- 添付文書では中性脂肪の著明な上昇が約25%、肝酵素の上昇が約15%。血液検査をしない施設で続けないでください。
- 起こりやすい人
- 結節の多い重症の人、高い用量で始めた人。
- 起こる時期
- 開始後の数週間。
- 備え
- 「効いていない」と自己判断で増量しないこと。悪化が強いときは減量で対応することがあります。
- 起こりやすい人
- 傾向は確立していません。うつ病の既往がある人は特に注意。
- 起こる時期
- 服用中いつでも。中止後の報告もあります。
- 備え
- 気分の変化、眠れない、死にたい気持ちが出たら、中止して受診してください。家族にも伝えておくと早く気づけます。
- 起こりやすい人
- 傾向は確立していません。夜間に運転する人は影響が大きい。
- 起こる時期
- 服用中。中止後も残ることが報告されています。
- 備え
- 夜間の見えにくさ、耳鳴りや聞こえの変化が出たら中止して受診を。
- 起こりやすい人
- 運動量の多い人、10代。
- 起こる時期
- 服用中。
- 備え
- 米国の添付文書では小児で背部痛約29%、関節痛約22%。強い運動の前後で悪化するなら相談を。
- 起こりやすい人
- 傾向は確立していません。腸の病気の既往がある人は申告を。
- 起こる時期
- 服用中〜中止後。
- 備え
- 血便、続く腹痛、下痢が出たら受診を。添付文書は中止後も続く例を記載しています。
⑤ やめるとき
承認国の添付文書では1コース15〜20週です。用量は体重あたりで決まり、累積量で終了を判断する考え方が一般的です。「飲み続ける薬」ではありません。3か月を過ぎても終わりの目安を示されないなら、聞いてください。
いつでもやめられます。離脱症状はありません。ただし、中止後1か月は避妊を続けてください(催奇形性)。気分の変化や視力・聴力の変化が出たときは、次の受診を待たずに中止してよい薬です。
1コースを完了した人は多くが寛解を保ち、中止後も改善が続く人がいます。再発すれば8週以上あけて2コース目になります。途中でやめた場合の再発率のデータは、当サイトは確認できていません。
月ごとの支払いが基本です。返品はできないのが通常なので、まとめ買いは避けたほうが安全です。血液検査料を含めた1コースの総額で考えてください。
⑥ 価格
20mg 30日分は13,000円・13,200円・16,500円の3件で、最安と最高で約1.3倍。10mg 30日分は8,250円と9,000円の2件でした。別に初診料1,100〜3,000円、再診料550〜3,000円、採血3,300円前後がかかります。3件の確認なので幅の目安であり、相場ではありません。
国内未承認のため薬価はありません。表示価格がすべてです。1コース15〜20週なら、20mgで薬剤費だけで5〜8万円、これに毎回の診察料と数回の血液検査料が加わります。まとめ買いの割引は、用量変更や中止のときに無駄になります。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 処方される製品名と製造国は何ですか。国内未承認であることを、説明書に書いてもらえますか。
- 妊娠の可能性がある場合、避妊と妊娠検査をどう管理しますか。中止後いつまで避妊が必要ですか。
- 血液検査(脂質・肝機能)は、いつ、何回、いくらで行いますか。
- 私のニキビは「重症の結節性」ですか。外用薬や抗菌薬をまず試す選択肢はありますか。
- 1コースは何週間で、終わったあとに再発したらどうしますか。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- Costa CS, Bagatin E, Martimbianco ALC, et al. Oral isotretinoin for acne. Cochrane Database Syst Rev. 2018;11:CD00943531試験・3,836人。経口抗菌薬+外用薬との比較で炎症性皮疹数の減少に差なし(RR 1.01)、医師評価の改善はRR 1.15、軽い副作用はRR 1.67。用量比較14試験・906人で重篤な副作用の報告なし。エビデンスの質は低〜非常に低。PubMed抄録で確認。12試験が製薬企業の資金
- 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023. 日皮会誌. 2023;133(3):407-450未承認薬は「現時点での推奨は困難と考え採用していない」(p.408)。CQ26の解説に「囊腫は抗菌薬に反応しにくいため,海外ではレチノイド内服が勧められているが,本邦では使用できない」。PDF原文を確認。イソトレチノインのCQは設けられていません
- 米国FDA イソトレチノインカプセル添付文書(openFDA drug label API、2026-09-05取得)枠組み警告(催奇形性、iPLEDGE、開始1か月前〜終了1か月後の2種類の避妊)、適応(全身抗菌薬を含む従来治療に反応しない重症結節性痤瘡)、0.5〜1mg/kg/日・15〜20週、2コース目は8週以上あける、中性脂肪の著明上昇約25%、肝酵素上昇約15%、精神症状・炎症性腸疾患・視力・聴力の警告、小児の背部痛約29%・関節痛約22%
- 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、3施設)アクネトレント 20mg 30日分 13,000円・13,200円・16,500円、10mg 30日分 8,250円・9,000円、初診料1,100〜3,000円、採血3,300円の表示。施設名は扱いません。効果の根拠としてではなく、価格と案内内容の確認として参照しました