ケミカルピーリング(サリチル酸マクロゴール・グリコール酸)
ピーリングは「効くか」より「何に効くか」が分かれる施術です。学会の表を見れば、ニキビと小さなシミには根拠が、肝斑と毛穴には根拠が薄いことが一目で分かります。
酸で角質から表皮の浅い層をはがし、新しい皮膚に入れ替える施術です。日本皮膚科学会のガイドラインは、ニキビ・小斑型の日光黒子(シミ)・小じわに対するグリコール酸とサリチル酸マクロゴールを「推奨度C1(行うことを考慮してもよい)」とし、肝斑・雀卵斑・炎症後色素沈着・陥凹性瘢痕は「C2(十分な根拠がない)」としています。179試験の統合解析(2022年)では、軽症〜中等症ニキビへのピーリングは皮疹を約40%減らしましたが、信頼区間は13〜67%と幅が広く「不確実性が高い」評価でした。厚生労働省は2001年に「医行為」と通知しており、エステでは受けられません。顔1回4,320〜8,800円です。
① 国内で承認されている使い方
ケミカルピーリングは医師(または医師の指示下)が行う医行為で、保険は適用されません。使う薬剤(グリコール酸、サリチル酸マクロゴール、トリクロロ酢酸など)は医薬品として承認された製品ではなく、医療機関が調製・購入した薬剤を医師の責任で使います。日本皮膚科学会はガイドラインで剥離の深さを4段階に分け、薬剤と濃度を対応づけています。
② 臨床試験で確かめられていること
ニキビ: 皮疹の数を減らす効果は複数の試験で示されていますが、確実性は低く、どの酸が良いかの比較はほとんどありません。外用薬(過酸化ベンゾイル、アダパレン)は保険で使えるので、まずそちらが先です。
シミ: 小さくて薄い日光黒子(小斑型)には根拠がありますが、大きな日光黒子はレーザー・IPLのほうが一般的で、ピーリングはC2です。TCAピーリングの成功率は12〜46%(41試験のレビュー)とばらつきます。
肝斑: 24研究・1,075人のレビューでは「安全で有効」とされましたが統合解析はできず、日本のガイドラインではC2です。刺激で悪化することもあります。
小じわ・キメ: 浅層ピーリングは表皮の入れ替えでキメを整えます。深いしわには届きません。
- 誰に
- ニキビ・日光黒子・肝斑・雀卵斑・炎症後色素沈着・小じわ・陥凹性瘢痕の患者(国内外の文献を委員会が評価)
- 何を
- グリコール酸/サリチル酸(マクロゴール基剤・エタノール基剤)/乳酸/トリクロロ酢酸のピーリング
- 何と比べて
- 文献レベル(I〜VI)に基づく推奨度A〜D
- どうなった
- C1(行うことを考慮してもよい): ニキビ(グリコール酸・サリチル酸マクロゴール)、小斑型日光黒子(同)、小じわ(同)。C2(十分な根拠がない): 肝斑、雀卵斑、炎症後色素沈着、大斑型日光黒子、陥凹性瘢痕。国内に高レベルの論文なし(#は欧米文献を参考)
- 誰に
- ニキビの患者(179の無作為化試験、約35,000観測、49の治療クラス)
- 何を
- 化学的ピーリング(サリチル酸またはマンデル酸)
- 何と比べて
- プラセボ・他のニキビ治療
- どうなった
- 軽症〜中等症: 皮疹数の減少 39.70%(95%信用区間12.54〜66.78)。「不確実性が高い」。試験の質は中等度〜非常に低い
- 誰に
- ニキビの患者3,880人(49試験)
- 何を
- グリコール酸・サリチル酸・マンデル酸など
- 何と比べて
- プラセボ・他剤・相互比較
- どうなった
- グリコール酸 vs サリチル酸・マンデル酸: 患者の全般評価 RR 1.06(95%CI 0.88〜1.26、1試験40人)。多くの比較は「低〜非常に低い確実性」
- 誰に
- 健康志願者44人+ニキビ患者436人(九州大学)
- 何を
- 30%サリチル酸マクロゴール(ポリエチレングリコール基剤)ピーリング
- 何と比べて
- 対照群なし
- どうなった
- 「面皰と丘疹が消失し良好な結果」。刺激・灼熱感・浮腫・出血・痂皮が「目立って少ない」。改善率の数値は抄録に記載なし
- 誰に
- 肝斑24研究・1,075人/日光黒子41試験・3,234人
- 何を
- グリコール酸ほか各種ピーリング/TCAピーリングほか
- 何と比べて
- 各研究の対照
- どうなった
- 肝斑: 「安全で有効」だが異質性のため統合できず(グリコール酸が最も安全で有効と評価)。日光黒子: TCAの成功率12〜46%、多くの有害事象は軽度・一過性。PubMed抄録で確認
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 日本人でのグリコール酸 vs サリチル酸マクロゴールの無作為化比較。ガイドライン自身が「国内に高レベルの論文がない」と書いています。
- 何回で効果が頭打ちになるか、やめた後どれくらい維持されるか。
- 肝斑への効果と悪化のリスクの大きさ。
- ニキビの保険治療(外用レチノイド・過酸化ベンゾイル)との直接比較。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。濃度が高いほど、グリコール酸はサリチル酸マクロゴールより刺激が強い。
- 起こる時期
- 施術中〜数日。
- 備え
- 数日で落ち着きます。保湿と遮光を。1週間以上続く赤みは受診。
- 起こりやすい人
- 日本人を含む色素の濃い肌質、日焼け直後、施術後に日焼けした人。
- 起こる時期
- 数週間〜数か月。
- 備え
- 施術後の遮光が最大の予防です。肝斑がある人は悪化することがあります。
- 起こりやすい人
- 口唇ヘルペスの既往がある人。
- 起こる時期
- 数日〜1週間。
- 備え
- 既往を申告すれば予防内服の相談ができます。
- 起こりやすい人
- 濃度や塗布時間の誤り、TCAや高濃度グリコール酸。
- 起こる時期
- 施術中〜数週間。
- 備え
- 白くなる(フロスト)、水ぶくれ、痂皮は深く入ったサイン。写真を撮って施設に連絡。
- 起こりやすい人
- 肝斑、毛穴、大きなシミ、クレーターを目的にした人(推奨度C2)。
- 起こる時期
- 3〜5回後。
- 備え
- 回数を重ねる前に「何に効かせるつもりか」を確認してください。
⑤ やめるとき
ニキビは2〜4週ごとに3〜6回、シミ・小じわは月1回で数回が一般的ですが、ガイドラインに回数の規定はありません。効果は表皮の入れ替わりとともに薄れるため、維持には継続が前提です。
いつでもやめられます。医学的な離脱はありません。回数コースは特定商取引法の特定継続的役務(にきび・しみ・しわ等の除去で1か月超・5万円超の契約)に当たれば中途解約できます。
皮膚は元の状態に戻ります。改善したニキビは再発しえます。
1回ごとの支払いが基本です。コース契約の残回数の精算方法(解約料の上限は法定)を契約前に確認してください。
⑥ 価格
A施設はサリチル酸マクロゴール全顔4,320円、顔+首10,370円(初回8,500円)。B施設はグリコール酸・サリチル酸マクロゴール初回5,500円・通常8,800円、他の薬剤で8,250〜9,790円、5回39,600〜47,300円。C施設は6,000〜8,000円(症例で1回6,600円、3回18,700円)で、導入(イオン導入・エレクトロポレーション)を3,500〜5,500円で追加する形です。最安と最高で約2倍。3施設の確認で、相場ではありません。
薬剤に公定価格はなく、表示価格がすべてです。月1回×数回が前提なので、1回価格より「何回で何を目指すか」の合計で考えてください。導入・パックなどの追加メニューで1回の支払いが倍になる施設があります。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 私の悩み(ニキビ・シミ・肝斑・毛穴)は、日本皮膚科学会のガイドラインでC1(根拠あり)とC2(根拠が十分でない)のどちらですか。
- 使う薬剤の名前・濃度・基剤は何ですか(サリチル酸はマクロゴールかエタノールか)。
- 施術は医師ですか、医師の指示下の看護師ですか。ニキビなら、保険の外用薬を先に使わない理由は。
- 何回を目安にし、効果がなければ何回でやめますか。1回の価格と、コース契約の解約条件は。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- 日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)日皮会誌 2008;118(3):347-355(委員長 古川福実)表2 剥離深度の4分類、表3 剥離深度と薬剤・濃度、表4 EBMに基づく疾患別推奨度(ニキビ・小斑型日光黒子・小じわはC1、肝斑・雀卵斑・炎症後色素沈着・大斑型・陥凹性瘢痕はC2、#は欧米文献参考)、適応に注意を要する人。日本皮膚科学会サイトのPDF原文を確認(本文の一部は文字化けで表のみ判読)
- 厚生労働省医政局医事課長通知「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて」平成13年11月8日 医政医発第105号「酸等の化学薬品を皮膚に塗布して、しわ、しみ等に対して表皮剥離を行う行為」は医師法第17条の医行為。厚労省法令等データベースの原文を確認
- Mavranezouli I, et al. Br J Dermatol. 2022;187(5):639-649179試験のネットワークメタ解析。化学的ピーリングは軽症〜中等症ニキビで皮疹39.70%減(12.54〜66.78)、不確実性が高い。PubMed抄録で確認
- Liu H, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2020;5:CD01136849試験・3,880人。グリコール酸 vs サリチル酸・マンデル酸 RR 1.06(1試験40人)、確実性は低〜非常に低い。PubMed抄録で確認
- Dainichi T, et al. Dermatol Surg. 2008;34(7):891-89930%サリチル酸マクロゴール。志願者44人+ニキビ436人。刺激・痂皮が少ない。改善率の数値なし。PubMed抄録で確認
- Sarkar R, Lakhani S. Dermatol Surg. 2024;50(7):656-661/Mardani M, et al. J Cosmet Dermatol. 2025;24(4):e70133肝斑24研究(統合不能)、日光黒子41試験(TCA成功率12〜46%)。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- 複数の皮膚科公開ページ(2026-09-05確認、3施設)全顔4,320円、初回5,500円・通常8,800円・5回39,600〜47,300円、6,000〜8,000円+導入3,500〜5,500円。施設名は扱いません