IPL(フォトフェイシャル・光治療)
シミに効く光であることは日本人のデータで示されています。問題は「顔全体のくすみ・ハリ・毛穴」まで効くかのように売られている点と、肝斑を見落として照射すると悪くなる点です。
キセノンランプの幅広い波長の光を顔全体に当て、メラニンと血管に熱を入れる施術です。美容医療診療指針(2021年改訂)は日光黒子(老人性色素斑)へのレーザー・IPLを「推奨度1(強く推奨)」、肝斑へは「条件つきで弱く提案」としています。日本人97人の研究では色素斑の90%以上、毛細血管拡張の83%以上が「良好・優秀」で、合併症は4人(4.1%)でした。2021年にステラM22、2022年にノーリスが国内承認され、承認機器を使っているかを聞けます。全顔1回9,800〜33,000円と、施設で3倍以上の差があります。
① 国内で承認されている使い方
IPL機器は長く「未承認機器」でしたが、2021年2月にステラM22(ルミナス)が、2022年3月にノーリス(キャンデラ)が国内承認を取得しました。ノーリスの使用目的は色素性疾患・血管病変・長期減毛です。それ以外の多くのIPL機器は未承認で、医師の個人輸入です。承認の有無にかかわらず自由診療で、シミの診断(悪性の除外)は医師の仕事です。
② 臨床試験で確かめられていること
日光黒子・そばかす: メラニンに熱が入り、数日で薄いかさぶたになって剥がれます。3〜5回で半分以上改善する人が5〜7割、75%以上改善は2〜3割です(日本人の研究)。
赤ら顔・毛細血管拡張: 血管への効果も示されています(83%以上が良好・優秀)。ただし色素斑向けと血管向けで最適な波長設定が違います。
肝斑: 効果は限定的で、悪化することがあります。肝斑があるかは紫外線写真でしか分からないことがあり(223人の28.3%)、見落として照射すると濃くなります。
小じわ・毛穴・ハリ: 16研究637人の系統的レビューは「キメ・毛穴・小じわ」への効果を報告した研究を挙げていますが、9研究が低品質で、7研究では他の治療のほうが優れていました。指針の推奨対象でもありません。
- 誰に
- アジア人(日本人)97人
- 何を
- IPL(550/570nmカットオフフィルター)、2〜3週ごとに3〜6回
- 何と比べて
- 対照群なし
- どうなった
- 「良好または優秀」の割合: 色素斑90%以上、毛細血管拡張83%以上、キメ65%以上。合併症4人(紅斑1、小水疱3)
- 誰に
- 日光黒子の日本人31人(Sasaya)/日光黒子・雀卵斑の患者(Kawada、3〜5回)
- 何を
- IPL(515nmフィルター、月1回最大5回)
- 何と比べて
- 対照群なし
- どうなった
- Sasaya: 50%以上改善62%、75%以上改善23%、色素沈着・瘢痕・中止なし。Kawada: 全体で50%以上改善48%、75%以上改善20%。日光黒子のみでは40%/16%、雀卵斑は71%が50%以上改善
- 誰に
- アジア人32人(雀卵斑15人、日光黒子17人)
- 何を
- IPL 2回(4週間隔)
- 何と比べて
- Qスイッチアレキサンドライトレーザー1回(反対側の頬)
- どうなった
- 両者とも改善(p<0.0001)。雀卵斑はレーザーが優位(p=0.04)、日光黒子はIPLが優位。炎症後色素沈着はレーザー側で日光黒子17人中8人、IPL側で0人
- 誰に
- 日光黒子・肝斑の患者
- 何を
- レーザー・光治療(IPL)
- 何と比べて
- 遮光・美白剤などの保存的治療
- どうなった
- 日光黒子: 推奨度1(強く推奨)。「長期にわたる検討や他の治療法との比較が十分ではない」。肝斑: 推奨度2(条件つきで弱く提案、保存的治療で不十分な場合の併用)。悪性腫瘍との鑑別に注意
- 誰に
- 16研究・637人(Fitzpatrick I〜IV、21〜80歳)
- 何を
- IPL、平均4.29回(3〜7回)
- 何と比べて
- 研究ごとに異なる(他治療・併用)
- どうなった
- 毛細血管拡張・しわ・毛穴・紅斑・キメ・色素斑への効果を報告した研究が多い一方、9研究が低品質、7研究では他治療・併用のほうが優位。至適パラメータの合意なし。有害事象は一過性の紅斑が主
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 日本人での無作為化比較試験(IPL vs 無治療・vs レーザー)。指針も「他の治療法との比較が十分ではない」としています。
- 効果の持続期間と、再発(新しいシミ)までの期間。
- 「くすみ・ハリ・毛穴」への効果の大きさ。承認された使用目的の外で、質の高い試験がありません。
- 承認機器と未承認機器で結果や安全性に差があるか。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。
- 起こる時期
- 直後〜数時間(施設は2〜3時間と説明)。
- 備え
- 冷却と保湿で落ち着きます。翌日以降も続く赤みは施設に連絡。
- 起こりやすい人
- 色素斑に反応した人(20人中16人で観察)。
- 起こる時期
- 数日〜1〜2週間。
- 備え
- 治療反応で、自然に剥がれます。無理に剥がすと色素沈着の原因。
- 起こりやすい人
- 日焼けした肌、色の濃い肌質、出力の設定ミス。
- 起こる時期
- 直後〜数日。
- 備え
- 97人中3人に小水疱。水ぶくれは写真を撮って即連絡。
- 起こりやすい人
- 肝斑のある人(潜在性を含む)、施術後に日焼けした人。
- 起こる時期
- 数週間〜数か月。
- 備え
- 施術前の肝斑の診断と、施術後の遮光が予防です。悪化したら照射を中止し、トラネキサム酸などの保存的治療へ。
- 起こりやすい人
- 推奨対象外の悩みで受けた人。
- 起こる時期
- 3〜5回後。
- 備え
- 回数を重ねる前に目的を確認。
⑤ やめるとき
3〜4週ごとに3〜5回を1クールとし、その後は数か月に1回の維持照射を勧める施設が多い。指針に回数の規定はありません。
いつでもやめられます。回数コースは特定商取引法の特定継続的役務(しみ・そばかす等の除去で1か月超・5万円超)に当たれば中途解約できます。
取れた色素斑は戻りませんが、新しいシミは紫外線でできます。効果の持続期間のデータは限られています。
1回払いが基本。コースの残回数の精算方法を契約前に確認。「都度払いより安い」コースは、途中でやめると割高になることがあります。
⑥ 価格
A施設はステラM22で全顔1パス16,280円・2パス24,420円、5回コース81,400円。B施設はステラM22で全顔2パス9,800円。C施設は初回7,800円・通常12,800円・5回47,400円。D施設は33,000円/回。最安と最高で約3.4倍。同じ承認機器でも施設で1.7倍の差があり、価格差の主因は機器ではありません。4施設の確認で、相場ではありません。
機器の承認の有無と価格は連動していません。表示価格に「パス数(顔全体を何周照射するか)」と「部位(全顔か頬のみか)」が含まれているかで、同じ金額でも中身が違います。3〜4週ごとに3〜5回が1クールなので、5回の合計で比べてください。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 私のシミは日光黒子ですか、肝斑ですか、それ以外ですか。悪性の可能性は診てもらえましたか。
- 使う機器の製品名は何で、国内承認機器ですか(承認番号は)。
- 何回で、どのくらいの改善を目安にしますか。効かなかったときにレーザーに切り替える基準は。
- 施術後の遮光の指示と、肝斑が濃くなったときの対応を教えてください。
- 1回の価格に含まれるもの(全顔か、パス数、麻酔・冷却)と、コース契約の解約条件は。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- 日本美容外科学会(JSAPS)ほか「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」日美外報 2022;44 特別号CQ1-1-1 日光黒子へのレーザー・光治療は推奨度1(強く推奨)、CQ1-1-2 肝斑は推奨度2(条件つき)。IPLの有用性はBjerringのRCT以降、日本人でKawada・Tanakaが報告。悪性腫瘍との鑑別。PDF原文を確認
- Negishi K, et al. Dermatol Surg. 2001;27(7):627-631日本人97人。色素斑90%以上・毛細血管拡張83%以上・キメ65%以上が良好〜優秀。合併症4人。PubMed抄録で確認
- Sasaya H, et al. Dermatol Ther. 2011;24(6):584-586/Kawada A, et al. Dermatol Surg. 2002;28(6):504-508/Kawada A, et al. J Dermatol Sci. 2002;29(2):91-96日本人31人で50%以上改善62%。3〜5回で50%以上改善48%。20人中16人にマイクロクラスト(治療反応の機序)。PubMed抄録で確認
- Negishi K, et al. Dermatol Surg. 2004;30(6):881-886日本人女性223人の28.3%に紫外線写真でのみ見える潜在性肝斑。IPLで顕在化しうる。PubMed抄録で確認
- Wang CC, et al. J Am Acad Dermatol. 2006;54(5):804-810分割顔RCT。日光黒子はIPL優位、雀卵斑はレーザー優位。PIHはレーザー側8/17、IPL側0。PubMed抄録で確認
- Sales AFS, et al. Arch Dermatol Res. 2022;314(9):823-83816研究637人の系統的レビュー。9研究が低品質。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- ルミナスジャパン「Stellar M22 IPLモデル薬事承認取得のご案内」2021年2月15日/キャンデラ「IPLで国内初!皮膚色素性疾患用光治療器Nordlys 薬事承認取得」2022年ステラM22: 2021年2月9日承認、30300BZX00035000、キセノン光線治療器(使用目的の記載なし)。ノーリス: 2022年3月14日承認、30400BZX00032000、使用目的は表在性良性色素性疾患・血管病変・長期減毛。両社の「国内初」の表現の違いは承認された使用目的の範囲によるとみられますが、当サイトは承認書を確認していません。各社の原文ページを確認
- 複数の皮膚科・クリニック公開ページ(2026-09-05確認、4施設)全顔16,280円(1パス)・24,420円(2パス)・5回81,400円、全顔2パス9,800円、初回7,800円・通常12,800円・5回47,400円、33,000円。施設名は扱いません