NMN点滴
「サーチュイン遺伝子」「若返り」は機序の話です。人で測ったのは血液の数値までで、若返ったかどうかは誰も測っていません。
NMNは体内でNAD+に変わる物質で、サプリメントとしては2020年に「食品」として扱えるようになりました。点滴用の製剤は未承認で、クリニックが院内で調製しています。飲むNMNの8つの無作為化試験・342人のメタ解析では、血糖・インスリン・脂質に有意な効果はありませんでした。点滴のヒト試験は、健康な10人に投与した対照群のない試験が1件で、血中NAD+が上がり中性脂肪が下がった、という報告です。「若返り」「老化防止」を測った試験はありません。
① 国内で承認されている使い方
NMN(β-ニコチンアミドモノヌクレオチド)は食品(サプリメント)として流通しています。点滴・注射用の製剤は国内で承認されておらず、医師が院内で調製するか、外部に委託した未承認製剤を使います。当サイトが確認した4施設のうち3施設が「国内未承認」を明記していました。
② 臨床試験で確かめられていること
「効かない」と示されたのは、経口NMNの血糖・脂質への効果です。点滴は「測られていない」段階です。
血中NAD+が上がることは、経口でも点滴でも示されています。問題は、NAD+が上がると何が良くなるのかが、人で示されていないことです。
動物実験では寿命や運動能力への効果が報告されていますが、動物実験です。人の若返りに置き換えることはできません。
経口サプリと点滴で、体内に入る量と経路は違います。ただし、どちらの経路でも「若返り」を測った人の試験はありません。
- 誰に
- 中高年の成人342人(8つの無作為化試験、大半は糖尿病でない)
- 何を
- 経口NMN 250〜2,000mg/日、14日〜12週
- 何と比べて
- プラセボ
- どうなった
- 空腹時血糖・インスリン・HbA1c・HOMA-IR・脂質のいずれにも有意な効果なし。「短期のNMN補充は血糖管理と脂質に有意な好影響を示さなかった」
- 誰に
- 糖尿病予備群で過体重・肥満の閉経後女性(人数は抄録に記載なし)
- 何を
- 経口NMN 10週間
- 何と比べて
- プラセボ(二重盲検)
- どうなった
- 骨格筋のインスリン感受性(クランプ法)が上昇。「NMNは筋肉のインスリン感受性・シグナル・リモデリングを高める」。健康な人の若返りを測った試験ではない
- 誰に
- 健康な10人
- 何を
- NMNの静脈内投与
- 何と比べて
- 対照群なし(単群・非盲検)
- どうなった
- 血中NAD+の有意な上昇、中性脂肪の有意な低下。心電図・バイタル・臓器機能の指標に変化なし。プラセボ比較なし、老化・見た目の指標なし
- 誰に
- NMN×静脈内投与×ヒト臨床試験で検索
- 何を
- NMN点滴
- 何と比べて
- プラセボ
- どうなった
- 該当は上の10人の単群試験1件のみ。若返り・老化・皮膚・疲労を主要評価項目にした無作為化試験は0件。確認できませんでした
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 点滴で上がった血中NAD+が、細胞や臓器の機能に何をもたらすか。人で測られていません。
- 長期・反復投与の安全性。NAD+代謝と腫瘍細胞の関係は研究途上で、がんの既往のある人への影響は不明です。
- 経口と点滴の体内動態の違いと、点滴でしか得られない効果があるのか。
- 適切な用量。100〜400mgの価格差は、効果の差に基づくものではありません。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。
- 起こる時期
- 投与中。
- 備え
- 点滴速度を落とすと軽くなることがあります。
- 起こりやすい人
- 院内調製・外部委託製剤の無菌性や発熱物質の管理が不明な場合。
- 起こる時期
- 投与中〜当日。
- 備え
- 未承認製剤のため製造基準が一定ではありません。調製元と無菌試験の有無を確認してください。
- 起こりやすい人
- 繰り返し受ける人、がんの既往のある人。
- 起こる時期
- 繰り返し受けるとき。
- 備え
- 人での長期データはありません。NAD+代謝と腫瘍の関係は研究途上です。がんの既往は申告を。
⑤ やめるとき
終わりの基準はありません。効果の試験がないため、続ける根拠も、やめる根拠も示されていません。
いつでもやめられます。離脱症状はありません。
何が変わったかが測られていないため、やめて何が戻るかも分かりません。血中NAD+は投与をやめれば元の値に戻ると考えられます。
回数券の未消化分の返金条件を確認してください。1回2.5〜8万円×回数の年額で考えてください。
⑥ 価格
A施設は100mg 35,000円・200mg 60,000円・300mg 75,000円(いずれも税別)。B施設は200mg 38,500円・400mg 66,000円(国内未承認と明記)。C施設は150mg 44,000円・300mg 77,000円(未承認・院内調剤と明記)。D施設は100mg 初回28,000円・5回券125,000円(1回25,000円)、200mg 5回券175,000円、300mg 5回券225,000円(未承認と明記)。同じ100mgで最安と最高は約1.5倍、300mgで約1.8倍。4施設の確認で、相場ではありません。
未承認製剤のため薬価はありません。表示価格がすべてです。経口NMNのサプリ(同じ成分)が食品として流通しており、点滴でしか得られない効果を人で示した試験がない以上、価格差の根拠は投与経路だけです。「5回券」「初回価格」は継続前提の設計です。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 点滴のNMN製剤はどこで調製され、無菌試験・発熱物質試験をしていますか。
- 私が期待している効果(若返り・疲労・肌)を、点滴のNMNで測った試験はありますか。
- 100mgと300mgで効果が違うという根拠は何ですか。
- 1回の価格と、何回続ける想定で、総額はいくらですか。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- Effects of Nicotinamide Mononucleotide on Glucose and Lipid Metabolism in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomised Controlled Trials. Curr Diab Rep. 2024;25(1):4(DOI 10.1007/s11892-024-01557-z)8つの無作為化試験・342人。血糖・インスリン・HbA1c・HOMA-IR・脂質に有意な効果なし。Europe PMCの抄録で確認
- Yoshino M, et al. Nicotinamide mononucleotide increases muscle insulin sensitivity in prediabetic women. Science. 2021;372(6547):1224-1229糖尿病予備群の閉経後女性、10週、二重盲検。筋肉のインスリン感受性が上昇。人数・用量は抄録に記載なし。PubMed抄録で確認
- Kimura S, et al. Nicotinamide Mononucleotide Is Safely Metabolized and Significantly Reduces Blood Triglyceride Levels in Healthy Individuals. Cureus. 2022;14(9):e28812健康な10人、静脈内投与、単群・非盲検。NAD+上昇・中性脂肪低下・安全性。用量は抄録に記載なし。PubMed抄録で確認
- Song Q, et al. The Safety and Antiaging Effects of Nicotinamide Mononucleotide in Human Clinical Trials: an Update. Adv Nutr. 2023;14(6):1416-1435ヒト試験の総説。抄録は安全性と生理作用への懸念に触れるにとどまり、本文は未確認
- 厚生労働省 食薬区分の改正(令和2年3月31日通知)によるNMNの非医薬品リスト収載「医薬品的効能効果を標榜しない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」リストにNMNを追加。健康産業新聞等の報道で確認した二次資料。点滴用製剤の承認とは無関係
- 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、4施設)100mg 35,000円(税別)・初回28,000円、150mg 44,000円、200mg 60,000円(税別)・38,500円、300mg 75,000円(税別)・77,000円・5回券45,000円/回、400mg 66,000円。3施設が国内未承認を明記、1施設は「東京大学の無菌室で製造」「世界で唯一安全性が確認」と案内。施設名は扱いません