IgG食物アレルギー検査(遅延型)
陽性は「よく食べている」のサインです。学会がそう言っているのに、除去食を売る材料に使われています。
血液中の食物に対するIgG抗体を測る検査です。IgG抗体は健康な人にも普通にあり、食べた量に比例して増えるだけで、確定診断である負荷試験の結果と一致しません。日本アレルギー学会は2015年に「推奨しない」と明言し、陽性食品の除去による健康被害を警告しています。
① 国内で承認されている使い方
医療機関で診断に使う検査としての承認・保険収載はありません。米国の検査機関に検体を送る形で、自由診療または通販で提供されています。食物アレルギーの標準検査(特異的IgE抗体・食物経口負荷試験)とは別物です。
② 臨床試験で確かめられていること
この検査が「何を測っているか」は明確です。食物に対するIgG抗体の量です。問題は、それが「不調の原因」を示すかどうかで、学会は示さないとしています。
IgGのうちIgG4は、むしろその食べ物に慣れている(寛容になっている)ことのサインだとEAACIは述べています。
除去食で症状が改善したという報告はIBSの1試験にとどまり、効果量は小さく、偽の除去食でも改善が見られました。
結果説明料・食事指導料が別に設定されている施設があり、検査後に「除去→再検査」のサイクルに入る設計になっていることがあります。再検査で数値が下がるのは、食べていないのだから当然です。
- 誰に
- 食物アレルギーが疑われる患者に対する検査の位置づけ(学会の見解)
- 何を
- 血中食物抗原特異的IgG抗体検査
- 何と比べて
- 食物経口負荷試験(確定診断)
- どうなった
- 「原因食品の診断法としては推奨しない」。健常人にも存在し、負荷試験と一致せず、摂取量に比例するだけ。陽性に基づく除去は多品目に及ぶと健康被害のおそれ
- 誰に
- 過敏性腸症候群(IBS)の外来患者150人。健康な人や疲労・肌荒れの人ではありません
- 何を
- IgG抗体が上昇した食品を除く食事、12週
- 何と比べて
- 同じ数の食品を除くが、抗体のある食品は除かない「偽の除去食」
- どうなった
- 症状スコアの減少が偽食より10%大きい(差39、95%CI 5〜72、p=0.024)。完全に守った人では26%(差98、52〜144)。著者は「さらなる研究に値する」段階と記述
- 誰に
- 欧州アレルギー学会タスクフォースによる文献レビュー
- 何を
- 食物特異的IgG4検査
- 何と比べて
- 対照なし(見解)
- どうなった
- IgG4は繰り返しの曝露と免疫学的寛容の指標。食物アレルギー・不耐症の検査として「無関係」であり、食物に関連する訴えがあっても「行うべきではない」
- 誰に
- IBS以外の不調(疲労・肌荒れ・頭痛など)を訴える人
- 何を
- IgG検査に基づく除去食
- 何と比べて
- 偽の除去食、または検査なしの通常ケア
- どうなった
- 確認できませんでした。この検査が主に売られている目的で、効果を測った無作為化試験は見つかっていません
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- IBS以外(疲労・肌荒れ・頭痛)で、IgG検査に基づく除去が偽の除去より効くかは測られていません。
- 除去食を続けた人の栄養状態の追跡データ。
- 子どもに検査して除去した場合の、成長への影響の集計。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 多品目が陽性になった人、子ども、妊婦、高齢者。
- 起こる時期
- 除去を始めて数週間〜数か月。
- 備え
- 学会が健康被害として警告しています。除去するなら、医師・管理栄養士の管理下で期限を決め、代わりの栄養源を確保してください。
- 起こりやすい人
- 即時型アレルギー、セリアック病、IBS、甲状腺の病気など、別の疾患がある人。
- 起こる時期
- 結果を受け取った時点から、除去を続けている間ずっと。
- 備え
- 「IgGで原因が分かった」と思うと、標準の検査に進まなくなります。症状が続くなら特異的IgE・負荷試験・消化器の検査へ。
- 起こりやすい人
- 陽性項目が多く出た人。
- 起こる時期
- 結果を受け取ったあと〜除去中。
- 備え
- 「よく食べるものほど陽性」を知っておくと、結果の受け止め方が変わります。
- 起こりやすい人
- 誰にでも起こりえます。
- 起こる時期
- 採血時。
- 備え
- 自己採血キットでは指先からの採血で、量が足りず再採取になることがあります。
⑤ やめるとき
検査は1回で終わりますが、問題は結果に基づく「除去」をいつまで続けるかです。学会の基準はなく、施設ごとに「3〜6か月除去して再検査」などと案内されます。
除去はいつでもやめられます。除去していた食品を再開するとき、即時型アレルギーの可能性がある人は医師の管理下で行ってください。
IgG値は食べる量に比例するので、除去すれば下がり、再開すれば上がります。それは「治った」「再発した」ではありません。
検査1回の支払いで終わります。「再検査で効果判定」を勧められたら、それが検査の性質上ほぼ必ず下がる数値であることを踏まえて判断してください。
⑥ 価格
219項目は49,500円・55,000円・64,900円の3件で、最安と最高で約1.3倍。120項目は44,000円が2件でした。同じキットが自己採血用として消費者向けに税込59,582円で直販されており、クリニックの価格はその前後に分布しています。別に初診料、採血料、結果説明料(30分5,500円など)がかかる施設があります。
保険収載がないため公定価格はありません。メーカー直販価格(税込59,582円)が事実上の基準で、クリニック価格との差は診察・説明の分です。検査は海外の検査機関で行われ、結果まで2〜4週間(直販キットは5〜10日)。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- この検査を「診断に推奨しない」とする日本アレルギー学会の見解を知っていますか。それでも勧める理由は何ですか。
- 陽性が出た食品を、何を根拠に、いつまで除去するのですか。再開の基準はありますか。
- 私の症状に、保険で受けられる標準の検査(特異的IgE・負荷試験・消化器の検査)はありますか。
- 検査代のほかに、結果説明・食事指導・再検査の費用はいくらですか。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- 日本アレルギー学会「血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起」(2015年2月25日)「食物抗原特異的IgG抗体検査を食物アレルギーの原因食品の診断法としては推奨しない」。理由: 健常人にも存在する、負荷試験の結果と一致しない、血清IgGレベルは摂取量に比例しているだけ。陽性に基づく除去が多品目に及ぶと健康被害のおそれ。米国・欧州のアレルギー学会と日本小児アレルギー学会も診断的有用性を否定と明記。学会ページの原文を確認
- Stapel SO, Asero R, Ballmer-Weber BK, et al. Testing for IgG4 against foods is not recommended as a diagnostic tool: EAACI Task Force Report. Allergy. 2008;63(7):793-796IgG4は繰り返しの曝露と免疫学的寛容の指標。食物アレルギー・不耐症の検査として無関係で、行うべきではない。PubMed抄録で確認
- Atkinson W, Sheldon TA, Shaath N, Whorwell PJ. Food elimination based on IgG antibodies in irritable bowel syndrome: a randomised controlled trial. Gut. 2004;53(10):1459-1464IBS患者150人・12週・偽の除去食との比較。症状スコアの減少差39(95%CI 5〜72、p=0.024)、完全遵守者で差98。著者は「さらなる研究に値する」段階と記述。クリニックが引用する主な根拠で、IBS以外には当てはめられません。PubMed抄録で確認
- メーカー公開ページおよび通販ページ(2026-09-05確認)IgG食物過敏フルパネル219項目: 54,165円(税込59,582円)、自己採血、結果5〜10日。通販ページに「医学的診断を目的とした検査ではなく」「医学的治療・診断の代替にはなりません」の注意書き
- 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、3施設)219項目 49,500円・55,000円・64,900円、120項目 44,000円・44,000円、結果説明料30分5,500円、初診・採血・判断料が別の施設あり。効果として倦怠感・体重増加・肌荒れ・頭痛・消化器症状の改善をうたう記載。施設名は扱いません