陰茎増大術(ヒアルロン酸注入・長茎術)
「大きくなる」こと自体は、注入すれば起こります。問題は、それが何か月続くのか、吸収されない物質を入れたら何が起きるのか、そしてこの施術が「包茎手術の相談に来た人に、その場で追加される」形で売られていることです。
陰茎の太さを増やす注入(ヒアルロン酸10ccで約17万〜40万円)、亀頭への注入、靭帯を切って見かけの長さを出す長茎術(20万〜55万円)などの総称です。57研究をまとめた系統的レビュー(BJU International 2021)は、小さいことを気にする健康な男性1,764人を対象にした18研究について「注入などの非侵襲的な方法は安全でおおむね有効、手術は軽い合併症を伴い寸法を増やした」としつつ、「研究の質は低く、効果と安全性を評価する標準基準がなく、科学的根拠に基づく推奨は確立できない」と結論しています。ヒアルロン酸とポリ乳酸を比べたメタ解析(4研究283人)ではヒアルロン酸のほうが太さの増加が大きく、満足度は同じでした。合併症のレビュー(2025年)は、非吸収性フィラーや自己注射で肉芽腫・壊死・感染・リンパ浮腫が起こり、広範囲の切除と皮膚移植が必要になること、脂肪注入では血腫・感染・輪郭の変形・まれに脂肪塞栓を挙げています。国民生活センターは、包茎手術の相談で「見た目を良くするためにコラーゲンやヒアルロン酸等を注入する増大術を勧められ、高額な施術が追加」された事例を報告しています。ヒアルロン酸は吸収されるため、施設は持続2〜3年、再注入で3〜5年と説明し、吸収されない製剤(PMMAなど)を扱う施設もあります。
① 国内で承認されている使い方
陰茎増大術に用いるヒアルロン酸は、国内では顔のしわ・輪郭用などに承認された製剤を陰茎に転用する承認外使用か、未承認の輸入製剤です。非吸収性フィラー(PMMAなど)、コラーゲン、自己脂肪注入、靭帯切離による長茎術、シリコンインプラントは、いずれも陰茎増大の目的で承認された医療機器・医薬品ではなく、自由診療です。学会の診療指針は確認できず、国際的な系統的レビューも「推奨を確立できない」としています。包茎手術(別ページ)と同時に勧められることが多く、国民生活センターが勧誘トラブルを記録しています。
② 臨床試験で確かめられていること
太さ: ヒアルロン酸で注入量に応じて増え、時間とともに吸収されます。効果の持続と再注入の費用を最初に計算する。
長さ: 靭帯を切る長茎術は「平常時の見かけ」を数cm出すもので、勃起時の長さは変わらないとされます。
満足度: 短期の満足は高く報告されますが、質の低い研究が中心で、長期の満足・後悔のデータはほぼありません。
機能: 注入で硬さや感覚が変わることがあります。試験では十分に測られていません。
- 誰に
- 小さいことを訴える健康な男性1,764人(18研究)、併存症のある男性2,587人(39研究)
- 何を
- 非侵襲的介入(牽引・フィラー注入)25研究、手術32研究
- 何と比べて
- —(研究の多くは対照群なし)
- どうなった
- 非侵襲的介入は「安全でおおむね有効」、手術は「軽い合併症を伴い寸法増加または彎曲矯正」。「研究の質は低く、効果・安全性・満足度の標準的な評価基準がなく、科学的根拠に基づく推奨は確立できない」
- 誰に
- 陰茎増大を受けた男性283人(4研究)
- 何を
- ヒアルロン酸注入
- 何と比べて
- ポリ乳酸注入
- どうなった
- 太さの増加はヒアルロン酸群で有意に大きい(p=0.01)。4週後の外観満足度に差なし。合併症の比較は限定的
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
- 誰に
- 増大術の合併症を経験した男性(文献総説)
- 何を
- ヒアルロン酸/非吸収性フィラー・自己注射/真皮マトリックス・脂肪移植/シリコンインプラント
- 何と比べて
- —
- どうなった
- ヒアルロン酸: 早期マッサージ・温罨法・ヒアルロニダーゼ、膿瘍は抗菌薬とドレナージ、難治の結節は切除。非吸収性・自己注射: 肉芽腫・壊死・感染・リンパ浮腫・変形性炎症→Buck筋膜までの広範切除と植皮・皮弁再建。脂肪: 浮腫・血腫・感染・壊死・輪郭変形・まれに脂肪塞栓。インプラント: 漿液腫・感染・遠位めくれ・被膜拘縮・彎曲・短縮
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
- 誰に
- 包茎手術の相談で来院した男性(相談事例)
- 何を
- 増大術(コラーゲン・ヒアルロン酸注入)の追加提案
- 何と比べて
- —
- どうなった
- 広告の施術では「手術痕が目立ったり、術後にひどい腫れ等が出るおそれがある」と不安をあおられ、「見た目を良くするために、コラーゲンやヒアルロン酸等を注入する増大術を勧められ、高額な施術が追加」。2026年: 急かされて高額契約・即日施術の事例。原文PDFを確認
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- ヒアルロン酸の陰茎での実際の持続期間(施設は2〜3年と説明。顔での持続は6〜18か月程度とされ、部位差のデータは乏しい)。
- 長期(5年以上)の満足度・後悔・機能への影響。
- 非吸収性製剤の国内での使用実態と合併症頻度。
- 日本の施設ごとの合併症・再注入・修正の頻度(公表なし)。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。
- 起こる時期
- 注入・手術直後〜1〜2週間。
- 備え
- 性交は施設の指示期間控える。
- 起こりやすい人
- 注入量が多い、浅い注入、脂肪注入。
- 起こる時期
- 数週間〜数か月。
- 備え
- ヒアルロン酸ならマッサージ・溶解で対処。非吸収性は切除が必要になりうる。
- 起こりやすい人
- 誰にでも(低頻度)。自己注射で高い。
- 起こる時期
- 数日〜数週間。
- 備え
- 発熱・強い痛み・膿は受診。
- 起こりやすい人
- PMMA等の非吸収性製剤、オイルやシリコンの自己注射。
- 起こる時期
- 数か月〜年単位。
- 備え
- 広範囲切除と植皮が必要になることがある。元に戻らない。
- 起こりやすい人
- 靭帯切離、インプラント。
- 起こる時期
- 数週間〜。
- 備え
- 勃起時の長さは増えず、不安定になることがある。
- 起こりやすい人
- ヒアルロン酸を選ぶ人。
- 起こる時期
- 数か月〜数年。
- 備え
- 再注入5ccで17万円の例。年額で考える。
- 起こりやすい人
- 包茎手術の相談で来院した人。
- 起こる時期
- 契約時。
- 備え
- 当日契約しない。国民生活センターの事例。
⑤ やめるとき
ヒアルロン酸は吸収されるまで(施設説明2〜3年)。非吸収性製剤・手術は永続。
ヒアルロン酸はヒアルロニダーゼで溶解できます。非吸収性製剤・脂肪・手術は戻せません。
ヒアルロン酸は元に戻ります。長茎術後に元に戻すことはできず、勃起時の短縮が残ることがあります。
一括払いが基本。再注入・修正・合併症時の切除の費用と保証を契約前に確認。当日契約はしない。
⑥ 価格
A施設: 高濃度ヒアルロン酸10cc 396,000円、再注入5cc 176,000円、持続2〜3年(1か月以内の追加で3〜5年)と説明、合併症の記載なし。B施設: ヒアルロン酸10cc 165,000円、亀頭ヒアルロン酸1cc 88,000円・スーパーヒアルロン酸1cc 165,000円、非吸収性製剤(PMMA)3cc 121,000円、長茎術(切らない)198,000円・(切る)298,000円・脂肪吸引併用550,000円、「自由診療」と明記、合併症の記載なし。同じ10ccで2.4倍。2施設の確認で、相場ではありません(検索結果ではヒアルロン酸10万〜30万円、脂肪注入25万〜50万円の解説あり)。
公定価格はなく、承認された用途の製剤ではないため薬価との対比もできません。ヒアルロン酸は吸収されるので、持続2〜3年なら年13万〜20万円の維持費です。「吸収されない」製剤は安く見えますが、問題が起きたときの切除・再建の費用と不可逆性を同じ天秤に載せてください。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 注入する製剤は何ですか。吸収されるヒアルロン酸か、吸収されない製剤か。承認された用途と、陰茎への使用が承認外であることを説明してください。
- 太さが何mm増え、何か月持つか、再注入の費用はいくらですか。長茎術なら勃起時の長さは変わらないと理解しています。
- しこり・感染・壊死が起きたときの対応(溶解・切除)と費用は。執刀医の合併症の頻度は。
- 今日は契約しません。見積書を持ち帰り、包茎手術と増大術を分けて検討したいです。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- Non-invasive and surgical penile enhancement interventions for aesthetic or therapeutic purposes: a systematic review. BJU Int. 2021;127(3):269-29157研究。健康男性1,764人。非侵襲は安全でおおむね有効、手術は軽い合併症、質が低く推奨不能。PubMed抄録で確認
- Ann Med Surg (Lond). 2023;85(9):4531-4538(HA vs PLA メタ解析)/Transl Androl Urol. 2025;14(10):3367-3376(合併症総説)HAで太さ増加大・満足度同等/非吸収性フィラーの肉芽腫・壊死・広範切除、脂肪の脂肪塞栓、インプラントの合併症。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- 国民生活センター 報道発表「包茎手術、薄毛治療など、男性の美容医療トラブルに注意!」(2019年)/「男性の美容医療トラブルも増加!」(2026年1月20日)包茎手術の相談で増大術(コラーゲン・ヒアルロン酸注入)を勧められ高額追加、急かされて即日施術の事例。PDF原文を確認
- 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、2施設)ヒアルロン酸10cc 165,000〜396,000円、再注入、亀頭注入、非吸収性製剤、長茎術198,000〜550,000円、持続期間の説明、合併症記載の有無。施設名は扱いません