タトゥー除去(ピコレーザー・Qスイッチレーザー)
レーザーは色素を壊す技術で、皮膚を元に戻す技術ではありません。「消える」と「薄くなって跡が残る」の間のどこに着地するかは、色と深さと肌質で決まり、始める前に半分は分かります。
皮膚の中の色素をレーザーで砕き、体に吸収させる方法です。ピコ秒レーザーの系統的レビュー(8試験・160人)では、1〜10回の照射で69〜100%の人が70%以上の除去に達し、36研究のレビューでは、青・緑・黄はピコ秒がQスイッチより優れ、黒はどちらも有効でした。国内では2017年にピコウェイが「体表面の色素性病変の治療並びに刺青の除去」を使用目的として承認されており、添付文書は有害事象として熱傷・水疱・色素沈着・色素脱失・瘢痕形成を挙げ、「顔面の刺青に対する有効性及び安全性は確立されていない」と書いています。施術者94人の調査では水疱1.9%、肥厚性瘢痕0.2%でした。1〜5cm²で1回31,350〜38,500円、名刺サイズなら1回約7〜8万円で、3〜10回かかります。
① 国内で承認されている使い方
タトゥー除去のレーザーは、国内承認機器(ピコウェイ=シネロン・キャンデラ、2017年承認、使用目的に刺青の除去を含む)と、未承認機器(エンライトン、ピコシュア、ディスカバリーピコなど、医師の個人輸入)が混在します。承認機器でも自由診療です。レーザー以外に、切除縫合、皮膚剥削、植皮があり、いずれも自由診療です。
② 臨床試験で確かめられていること
黒(炭素系)は最も反応し、3〜5回で大幅に薄くなる人が多い。プロの濃い彫りや多色は7〜10回以上が目安で、それでも「完全に消える」保証はありません。
青・緑・黄はピコ秒レーザーが有利、赤・橙は532nmが必要で、機器の波長構成で対応できる色が決まります。
薄くなった後に「白く抜ける」「うっすら影が残る」「質感が変わる」のは、色素が減っても皮膚が元に戻らないためです。
ピコ秒とQスイッチの差は、色によっては大きく、黒では小さい。「ピコだから少ない回数で消える」は色を限定した話です。
- 誰に
- 体表面の色素性病変・刺青のある人
- 何を
- ピコ秒レーザー(532/730/1064nm)による照射
- 何と比べて
- —
- どうなった
- 使用目的「体表面の深在性及び浅在性色素性病変の治療並びに刺青の除去」。有害事象: 熱傷、水疱形成、痂皮形成、色素沈着、色素脱失、瘢痕形成、紫斑、紅斑、浮腫、掻痒感。「顔面の刺青に対する有効性及び安全性は確立されていない」「刺青によっては色調変化又は変色」。禁忌: 皮膚悪性腫瘍部位、光線過敏、活動性ヘルペス、開放創・感染皮膚
- 誰に
- タトゥーのある160人(ヒト6試験)+動物2試験
- 何を
- ピコ秒レーザー(755/758/795/1064/1064+532nm)、1〜10回
- 何と比べて
- 研究ごと(Qスイッチとの比較は少数)
- どうなった
- 70%以上の色素除去に達した割合69〜100%。副作用は痛み、色素沈着・脱失、水疱、一過性の紅斑・浮腫・点状出血。「ピコ秒がナノ秒より有効という根拠は乏しく、副作用は軽微」
- 誰に
- 36研究(無作為化7、非無作為化対照2、症例集積27)
- 何を
- ピコ秒レーザー
- 何と比べて
- QスイッチNd:YAGレーザー
- どうなった
- 青・緑・黄はピコ秒が優位、黒はどちらも有効。Qスイッチは青・緑・黄に効きにくい。「さらなる無作為化比較試験が必要」
- 誰に
- レーザータトゥー除去を行う施術者94人(主にQスイッチ)の報告
- 何を
- レーザータトゥー除去
- 何と比べて
- —
- どうなった
- 浮腫3.0%、水疱1.9%、血腫0.7%、色素沈着・脱失約0.6%、肥厚性瘢痕0.2%、逆説的黒化0.2%、ケロイド・アレルギー・インクの飛散・感染各0.1%。色の濃い肌質(Fitzpatrick III以上)、カラーのタトゥーで合併症が増加。PubMed抄録で確認
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
- 誰に
- Qスイッチレーザーで治療した患者(文献レビュー)
- 何を
- ルビー(694nm)、アレキサンドライト(755nm)、Nd:YAG(532/1064nm)
- 何と比べて
- 機種どうし
- どうなった
- アレキサンドライトで色素脱失が最大50%、質感の変化12%。ルビーで質感変化・瘢痕・色素異常。Nd:YAGは色素脱失が少ない。「1つの機種ですべてのインクを除去することはできない」。PubMed抄録で確認
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 日本人の肌質(Fitzpatrick III〜IV)での色素脱失・色素沈着の頻度。国内の集計を確認できませんでした。
- 承認機器と未承認機器で結果や合併症に差があるか。
- 何回で「頭打ち」になるか(それ以上照射しても薄くならない回数)と、その後に残る影の割合。
- インクの成分(重金属・アゾ顔料)が砕かれて体内に入ることの長期的な影響。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。
- 起こる時期
- 照射中〜数日。
- 備え
- 麻酔クリームで軽減。冷却と保湿。
- 起こりやすい人
- 高い出力、日焼けした肌、色の濃い肌質。水疱1.9%。
- 起こる時期
- 直後〜1〜2週間。
- 備え
- かさぶたを剥がすと瘢痕・色素沈着の原因。水疱は写真を撮って連絡。
- 起こりやすい人
- 日本人を含む色の濃い肌質、照射後の日焼け。
- 起こる時期
- 数週間〜数か月。
- 備え
- 遮光が最大の予防。多くは時間とともに薄くなります。
- 起こりやすい人
- 色の濃い肌質、アレキサンドライト(最大50%)、回数の多い照射。
- 起こる時期
- 数か月〜。
- 備え
- 戻りにくい変化です。タトゥーの形に白く残ることがあります。
- 起こりやすい人
- ケロイド体質、過度の点状出血が出る出力、水疱を剥がした人。
- 起こる時期
- 数週間〜数か月。
- 備え
- 肥厚性瘢痕0.2%、ケロイド0.1%(調査)。添付文書は点状出血が過度なら出力を下げるよう指示。
- 起こりやすい人
- 白・肌色・化粧品系インク、アートメイク。
- 起こる時期
- 照射直後。
- 備え
- 0.2%。テスト照射で確認。黒化したものは追加照射で対応できることもあります。
- 起こりやすい人
- 赤インク(アゾ顔料)などにアレルギーのある人。
- 起こる時期
- 照射後数時間〜数日。
- 備え
- 砕かれたインクが全身に回り、じんましんやまれにアナフィラキシーの報告。
⑤ やめるとき
1〜3か月ごとに3〜10回以上。「これ以上薄くならない」回数に達したら終了で、その時点で残るものが最終結果です。
いつでもやめられます。途中でやめると、まだらに薄くなった状態で止まります。回数コースは特定商取引法(1か月超・5万円超、美容目的)の対象になりえます。
薄くなった色素は戻りません。色素脱失・瘢痕も戻りません。残った影を消す方法は切除などの手術になります。
都度払いか、解約可能なコースか。回数の上限が読めない施術なので、総額の上限を先に決めてから始めてください。
⑥ 価格
A施設はエンライトンIIIで面積別に1〜5cm² 31,350円、11〜25cm² 57,750円、51〜100cm² 75,900円、351〜400cm² 151,800円、月1回、薄い黒は3〜5回・濃い多色は7〜10回以上。B施設は基本33,000円/回、1mm当たり1,100円、1〜3か月おき、彫り師のものは3〜5回以上。C施設は墨1mm当たり1,100円・カラー1,650円、リング状22,000〜33,000円、処置代・薬代5,500円別、2〜3か月に1回、症例で2〜15回。比較記事では1〜5cm² 38,500円(5回セット26,950円/回)、モニター18,800円、1〜25cm² 33,000円の例。3施設の確認で、相場ではありません。
承認機器・未承認機器を問わず公定価格はなく、面積区分と回数で総額が決まります。名刺サイズを5〜10回なら38万〜76万円が目安で、「1回◯円」の広告は最小面積の価格です。回数の上限が読めないので、都度払いか、解約できるコースかを先に確認してください。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 使う機器の製品名は何で、国内承認機器ですか(承認番号は)。波長は私のタトゥーの色に対応していますか。
- 私のタトゥー(色・深さ・面積・年数)で、何回でどこまで薄くなる見込みですか。「完全に消える」と言えますか、言えませんか。
- テスト照射をしてもらえますか(逆説的黒化・肌質の反応の確認)。
- 色素脱失・瘢痕が起きたときの対応と費用は。私はケロイド体質・日焼け・フィラー・金属インプラントの有無を伝えました。
- 1回の価格に含まれる面積と、処置代・薬代・麻酔代。回数コースの解約条件は。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- ピコセカンドKTP/Nd:YAGレーザー PicoWay 添付文書 第4版(2022年2月14日、承認番号23000BZX00270000、PMDA医療機器情報)使用目的(色素性病変の治療並びに刺青の除去)、警告・禁忌、使用上の注意(顔面の刺青は有効性・安全性未確立、色調変化、点状出血と瘢痕、ケロイド、フィラー、金属)、有害事象、波長と対象色、妊婦・小児の安全性未確立。PDF原文を確認
- Reiter O, et al. Lasers Med Sci. 2016;31(7):1397-1405ピコ秒レーザー8試験・160人。1〜10回で69〜100%が70%以上除去。PubMed抄録で確認
- Gurnani P, et al. J Am Acad Dermatol. 2022;87(1):103-10936研究。青・緑・黄はピコ秒優位、黒は同等。PubMed抄録で確認
- Poelhekken M, et al. Dermatology. 2026;242(4):449-456/Kuperman-Beade M, et al. Am J Clin Dermatol. 2001;2(1):21-25施術者調査の合併症率、機種別の色素脱失(最大50%)・質感変化(12%)。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- Wu DC, et al. Lasers Surg Med. 2021;53(1):9-49ピコ秒レーザーの適応全般の系統的レビュー(77研究)。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、3施設)と比較記事面積別31,350〜151,800円、33,000円/回・1mm当たり1,100円、1mm当たり1,100〜1,650円+処置代5,500円、回数と間隔、エンライトンの使用。「未承認機器・個人輸入」の記載は検索結果のクリニック文言で二次確認。施設名は扱いません