トラネキサム酸内服(肝斑)
肝斑に「効く飲み薬」があるのは本当です。論点は、効くかではなく、いつまで飲むか、やめたらどうなるか、そして血栓のリスクを誰が見るかです。
トラネキサム酸(トランサミン)は止血や湿疹の薬として承認された飲み薬で、肝斑への処方は適応外の自由診療です。プラセボと比べた二重盲検試験(44人)では、1日500mgを3か月飲んで肝斑の重症度スコアが49%下がり(プラセボ18%)、やめて3か月後には26%(プラセボ19%)まで戻りました。22研究1,280人のメタ解析でも効果は一貫し、内服が注射・外用より効きました。同じ成分を1日750mg含む市販薬(トランシーノ)は「しみ(肝斑に限る)」の効能で承認された第1類医薬品で、8週間を上限に飲みます。薬価は1錠10.8円で、クリニックの1か月分は1,200〜3,000円です。
① 国内で承認されている使い方
医療用のトランサミン(トラネキサム酸)は、肝斑を効能に含まない承認薬で、肝斑目的の処方は適応外・自由診療です。薬価があるため、表示価格との差を見られます。同成分の市販薬トランシーノ(第一三共ヘルスケア)は「しみ(肝斑に限る)」で承認された第1類医薬品で、薬剤師の対面販売です。クリニックの「美白内服セット」はトラネキサム酸にビタミンC・Eを組み合わせたもので、ビタミンの上乗せ効果は当サイト未確認です。
② 臨床試験で確かめられていること
効果は約半分の薄まり(mMASI −49%)で、消えるわけではありません。プラセボでも18%下がるのは、日焼け止めを併用しているためです。
やめると戻り始めます。3か月後にはプラセボとの差がほぼ消えました。「続けるか、やめて再燃を受け入れるか」を最初に決める薬です。
用量は1日500〜750mgが標準で、ネットワークメタ解析では250mg×3回×12週が最適とされました。増やしても効果が比例して上がる根拠はありません。
ビタミンC・Eとの「セット」の上乗せ効果を検証した試験を当サイトは確認していません。セット価格は薬の価格ではなくメニューの価格です。
- 誰に
- 中等症〜重症の肝斑の女性44人(39人が完了)
- 何を
- トラネキサム酸250mgを1日2回3か月+日焼け止め、その後3か月は日焼け止めのみ
- 何と比べて
- プラセボ+日焼け止め
- どうなった
- 3か月後のmMASI低下: 49% vs 18%。服用終了3か月後: 26% vs 19%。重篤な有害事象なし
- 誰に
- 肝斑の患者1,280人(22研究、8週〜約2年)
- 何を
- トラネキサム酸の内服・注射・外用
- 何と比べて
- プラセボ・他治療
- どうなった
- MASI・mMASI・メラニン指数が有意に低下。効果は内服>注射>外用。有害事象は消化器症状・皮膚刺激・月経不順。確実性は中(研究間のばらつき大)
- 誰に
- 肝斑の患者599人(6つの無作為化試験)/59試験のネットワーク
- 何を
- トラネキサム酸内服の各用量
- 何と比べて
- 用量どうし・他治療
- どうなった
- 250mg×3回/日×12週が最適と評価(次点は250mg×2回)。内服の副作用発現は17.6%(Liu 2021)。原著はPubMed抄録で確認
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
- 誰に
- 肝斑の患者50人(各25人)
- 何を
- トラネキサム酸250mg 1日2回内服、12週
- 何と比べて
- トラネキサム酸5%クリーム 1日2回
- どうなった
- MASI低下: 内服58.86% vs 外用50.88%(群間差は有意でない)。外用で過敏による中止1人
- 誰に
- 15歳以上の肝斑のある人
- 何を
- トラネキサム酸750mg/日(4錠中)+L-システイン240mg+ビタミンC300mg、1日2回食後、8週間
- 何と比べて
- —(承認時試験の対照は当サイト未確認)
- どうなった
- 効能「しみ(肝斑に限る)」。「2カ月を超えて続けて服用しないでください」。「8週間で十分な(約85%の方に)効果が認められました」(メーカー表記。原著未確認)
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 何か月まで安全に飲み続けられるか。市販薬は2か月上限ですが、長期処方の安全性データは限られます。
- 健康な女性が美容目的で飲んだときの静脈血栓症の発生率。止血薬としての試験からの外挿しかありません。
- ビタミンC・E・L-システインの併用の上乗せ効果。
- やめた後の再燃を減らす方法(漸減、間欠投与)。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。添付文書で0.1〜1%未満、メタ解析では消化器症状が主。
- 起こる時期
- 服用開始〜数週間。
- 備え
- 食後に飲む。続くなら量を減らすか中止。
- 起こりやすい人
- 月経のある女性。
- 起こる時期
- 数週間〜数か月。
- 備え
- 止血作用の裏返しです。メタ解析で報告あり。
- 起こりやすい人
- 血栓の既往、ピル併用、喫煙、肥満、長時間の安静、40歳以上。
- 起こる時期
- 服用中いつでも。
- 備え
- 添付文書は血栓のある人・おそれのある人を注意対象とし、「離床、圧迫解除に伴い肺塞栓症を発症した例」を記載。片脚の腫れ・痛み、急な息切れ・胸痛は救急。
- 起こりやすい人
- 誰にでも(0.1%未満〜)。
- 起こる時期
- 服用開始〜。
- 備え
- 運転に注意。発疹は中止して相談。
- 起こりやすい人
- 受けたすべての人。
- 起こる時期
- 中止後1〜3か月。
- 備え
- 3か月後にはプラセボとの差がほぼ消えます。遮光を続けることが最大の維持策。
⑤ やめるとき
試験は3か月、市販薬は2か月上限。クリニックでは効果を見ながら3〜6か月が一般的で、終わりの目安は決まっていません。
いつでもやめられます。離脱症状はありません。手術や長時間の安静の前は中止を求められます。
再燃します。試験では中止3か月でプラセボとの差がほぼ消えました。遮光と外用で維持を図る形になります。
月ごとの支払いが基本。数か月分のまとめ買いは、血栓リスクの再評価(体調・手術)ができなくなる点に注意。
⑥ 価格
A施設は250mg×2回/日で1,200円、シナール1,100円・ユベラN1,000円を別売り。B施設は60錠3,000円(1回1錠1日2回)、セットは6,000円。C施設は4錠/日で2,000円、初回1,100円、ビタミンCとのセット5,000〜7,000円。最安と最高で2.5倍。薬価との差は1.9〜4.6倍で、診察・調剤・利益にあたります。市販のトランシーノEXの価格は当サイト未確認です。3施設の確認で、相場ではありません。
公定価格(薬価)のある薬なので、表示価格との差がそのまま「診察と利益」です。自由診療では保険の3割負担にはならず、薬価そのものが「原価の目安」です。セットのビタミンは上乗せ効果が未確認なので、単剤の価格で比べてください。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 私のシミは肝斑ですか(診断の根拠は)。肝斑でなければ、この薬は効きません。
- 血栓症の既往・ピル・喫煙・手術予定を伝えました。それでも処方できる理由は何ですか。
- 1日何mgを何か月飲み、その後どうしますか。やめたときに戻ることをどう考えていますか。
- 薬価10.8円の薬です。1か月分の価格に何が含まれていますか(診察・セットのビタミン)。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- トランサミン錠250mg/錠500mg/カプセル250mg/散50% 添付文書(KEGG MEDICUS収載版で確認)効能(肝斑は含まない)、用法750〜2,000mg/日、薬価10.8円/錠、禁忌(トロンビン投与中)、9.1.1 血栓のある患者・血栓症のおそれ、離床に伴う肺塞栓の報告、11.1.1 痙攣(透析患者)、11.2 消化器症状0.1〜1%未満、眠気
- Del Rosario E, et al. J Am Acad Dermatol. 2018;78(2):363-36944人の二重盲検プラセボ対照。mMASI −49% vs −18%、中止3か月後 −26% vs −19%。PubMed抄録で確認
- Calacattawi R, et al. J Dermatolog Treat. 2024;35(1):236110622研究1,280人のメタ解析。内服>注射>外用。有害事象は消化器・皮膚・月経。PubMed抄録で確認
- Wang Y, et al. Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2023;89(2):189-194/Liu Y, et al. Front Med (Lausanne). 2021;8:713554用量のネットワークメタ解析(250mg×3回×12週が最適)。内服の副作用17.6%。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- Heidary F, et al. J Cosmet Dermatol. 2025;24(9):e70428内服 vs 外用の無作為化試験50人。MASI −58.86% vs −50.88%。PubMed抄録で確認
- 第一三共ヘルスケア トランシーノEX 製品情報・「8週間プログラム」ページ第1類医薬品、効能「しみ(肝斑に限る)」、1日量4錠中トラネキサム酸750mg、15歳以上、2か月を超えて服用しない、約85%に効果(メーカー表記、原著未確認)。原文ページを確認
- 日本美容外科学会(JSAPS)ほか「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」CQ1-1-2肝斑は遮光・美白剤外用や内服などの保存的治療が先で、レーザー・IPLは不十分な場合の併用。PDF原文を確認
- 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、3施設)30日分1,200円、60錠3,000円、120錠2,000円、セット3,000〜7,000円、初回1,100円。血栓既往・ピル・喫煙で処方不可の記載。施設名は扱いません