ICL(眼内コンタクトレンズ)
レーシックで削れない強い近視の選択肢です。「取り出せる」が売りですが、取り出すのも手術で、内皮細胞は戻りません。
27研究・2,204眼の統合で有効性指数1.10、安全性指数1.19、目標±0.5D以内87%。合併症は45,027眼の解析でまれで、レンズの摘出は5年で約2%です。一方、角膜内皮細胞は21か月で3.8%減り、添付文書は「有水晶体後房レンズ挿入の長期安全性及び有効性は、未だ確立されていない」と明記し、定期的な受診を求めています。承認の対象は21〜45歳、−6.0D以上の強度近視です。
① 国内で承認されている使い方
アイシーエル KS-AquaPORT(承認番号22600BZX00085000、高度管理医療機器)は、中央に孔のある後房型の有水晶体眼内レンズとして承認されています。2010年2月に初代が承認され、現在は孔あきモデルが主流です。保険は適用されません。IPCLなど他社製の類似レンズは製品ごとに承認状況が異なります。
② 臨床試験で確かめられていること
視力の効果は、レーシックが適応外になる強い近視でも高く、目標度数の±0.5D以内が87%です。
合併症の頻度は低く、45,027眼の解析で視力を脅かす事象は1,000人年あたり1件未満でした。ただし追跡の多くは短期です。
角膜内皮細胞は少しずつ減り、21か月で3.8%です。この細胞は再生しないため、減り続けるなら将来レンズを取り出す判断になります。減る速さの長期データは限られています。
添付文書の重要な基本的注意に「長期安全性及び有効性は、未だ確立されていない」とあります。効果を否定する文言ではなく、定期検査を続ける前提の製品だという意味です。
- 誰に
- 中等度〜強度近視の2,204眼(27研究、平均追跡13.84か月)
- 何を
- 中央孔つきICL(V4c・V5)
- 何と比べて
- 対照群なし(成績の統合)
- どうなった
- 有効性指数1.103±0.019、安全性指数1.185±0.021、目標±0.5D以内87.45%。眼圧は安定(15.98mmHg)。角膜内皮細胞は統計的に有意だが臨床的に許容範囲の減少。視力を脅かす事象の報告なし
- 誰に
- 後房型有水晶体眼内レンズを入れた45,027眼(92.7%がV4cモデル)
- 何を
- ICL挿入
- 何と比べて
- 対照群なし(発生率の統合)
- どうなった
- 1,000人年あたり: レンズの回転・偏位4.2、摘出3.1(5年で約2/100眼)、網膜剥離0.4、黄斑浮腫0.3。「視力を脅かす事象は非常にまれ」
- 誰に
- ICL V4cを入れた眼(18研究)
- 何を
- ICL V4c
- 何と比べて
- 術前の内皮細胞密度
- どうなった
- 減少率: 3か月1.32%±1.28%、12か月1.75%±2.17%、21.25か月3.84%±1.78%。著者は他モデルと同程度で安全性を裏づけるとするが、減少自体は続く
- 誰に
- 添付文書が主要文献として挙げる3報(Shimizu K. Br J Ophthalmol 2012;96:409-412、Am J Ophthalmol 2012;154:486-494、Alfonso JF. J Cataract Refract Surg 2013;39:915-921)
- 何を
- 中央孔つきICL
- 何と比べて
- 従来型ICLなど
- どうなった
- 添付文書は臨床成績の数値を本文に記載していません。当サイトは3報の本文を未確認のため、数値は上のメタ解析を参照してください
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 10年以上の内皮細胞の減り方と、レンズを取り出す判断に至る割合。
- 将来の白内障手術への影響。ICLを取り出してから白内障手術になるため、手術が複雑になる可能性があります。
- −3〜−6Dの中等度近視での長期の益と害(添付文書の使用目的の外)。
- 施設ごとのサイズ選択の精度。不適切なサイズは白内障・眼圧上昇の原因になります(添付文書)。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 前房の浅い人、もともと内皮細胞の少ない人、高齢での手術。
- 起こる時期
- 手術直後から年単位で続きます。
- 備え
- 再生しない細胞です。減り続ければレンズ摘出や、将来の角膜移植の可能性につながります。術前の内皮細胞密度と、術後に何年検査を続けるかを聞いてください。
- 起こりやすい人
- レンズのサイズが合わない人(水晶体との距離が近い)、強度近視、高齢。
- 起こる時期
- 数か月〜数年。
- 備え
- IPCLとの比較研究で0.7〜0.8%。起きた場合はICLを取り出して白内障手術になります。
- 起こりやすい人
- 隅角の狭い人、ステロイド点眼に反応しやすい人。
- 起こる時期
- 手術当日〜数週間(一過性)。まれに長期。
- 備え
- 添付文書は手術当日に2時間以上の観察を求めています。急な目の痛み・頭痛・吐き気は救急です。
- 起こりやすい人
- 瞳孔の大きい人、夜間に運転する人。
- 起こる時期
- 数週間〜数か月。時間とともに減る傾向。
- 備え
- 添付文書が「術後経過とともに減少傾向」と説明したうえで同意を取ることを求めている症状です。
- 起こりやすい人
- 乱視用レンズ、サイズが合わない場合。
- 起こる時期
- 数週間〜数年。
- 備え
- 1,000人年あたり4.2件。乱視用は角度がずれると効果が落ちるため再手術になります。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。両眼同時手術は感染リスクの高い人では片眼ずつが望ましいとガイドラインが記載。
- 起こる時期
- 数日以内。
- 備え
- 急な視力低下・強い痛み・充血は救急。失明につながる合併症です。
- 起こりやすい人
- 強度近視の人はもともとリスクが高い。
- 起こる時期
- 数か月〜数年。
- 備え
- 1,000人年あたり0.4件。飛蚊症の急な増加、光が走る、視野が欠けるは受診を。強度近視眼の眼底検査を術前・術後に行うよう添付文書が求めています。
- 起こりやすい人
- サイズ不適合、内皮細胞の減少、白内障、度数の誤差。
- 起こる時期
- 数週間〜数年。
- 備え
- 5年で100眼あたり約2眼。「取り出せる」は事実ですが、取り出すのも手術で、費用と保証の扱いを確認してください。
⑤ やめるとき
1回の手術で完結しますが、内皮細胞検査などの定期受診は生涯に近い期間続きます。添付文書が定期的な経過観察を求めています。
手術前ならやめられます。手術後はレンズを取り出す手術で「元の近視」に戻せますが、減った内皮細胞と、手術による角膜の変化は戻りません。
レンズを取り出せば近視は戻ります。白内障になったときはレンズを取り出してから白内障手術になります。
1回払いが基本です。摘出・交換の費用、保証期間後の検査費用、将来の白内障手術時の追加費用を契約前に書面で確認してください。
⑥ 価格
A施設は427,000円(−4D以上は537,000円、乱視用は片眼+50,000円、保証3年。期間限定価格は398,000〜487,000円)。B施設は427,000円(中等度以上の近視は片眼+76,500円、乱視用は片眼+49,000円、術後3年の検診込み。最終更新2026年8月26日)。C施設は530,000〜630,000円(乱視あり630,000〜730,000円、初診検査・術後検診・薬代込み、保証6か月〜1年、初診検査料1万円、前金30万円)。最安と最高で約1.5倍。度数・乱視・保証年数・検査込みかで総額が変わります。3施設の確認で、相場ではありません。
承認機器ですが保険適用がなく、公定価格はありません。表示価格がすべてです。レンズ代(度数・乱視で変わる)と技術料、術後検診の年数、摘出・交換時の費用の扱いを分けて聞いてください。「期間限定価格」「前金」のある施設は、キャンセル時の返金条件を先に確認してください。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 私の前房深度と角膜内皮細胞密度はいくつで、添付文書の基準(前房3.0mm以上、年齢別の内皮細胞密度)に入っていますか。
- 術後の内皮細胞検査を何年続けますか。保証期間が終わったあとの検査費用はいくらですか。
- レンズの摘出・交換が必要になったときの条件と費用はどうなりますか。
- 将来、白内障になったときの手術はどうなりますか。
- 執刀医はICLの講習(Certificate)を受けた眼科専門医ですか。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- アイシーエル KS-AquaPORT 医療機器添付文書(2016年4月 第2版、承認番号22600BZX00085000、高度管理医療機器)禁忌27項目(21歳未満、屈折変化0.50D超、前房深度3.0mm未満、角膜内皮障害、白内障、緑内障、円錐角膜など)、使用目的(21〜45歳・−6.0D以上)、慎重適用(−15.0D超、年齢別最低角膜内皮細胞密度)、重要な基本的注意(長期安全性・有効性は未確立、内皮細胞密度の経過観察、サイズ不適合による水晶体混濁・眼圧上昇)、不具合13項目・有害事象43項目、承認条件、主要文献3報。PMDAのPDF原文を確認
- 日本眼科学会屈折矯正委員会「屈折矯正手術のガイドライン(第8版)」日眼会誌 2024;128(2):135-138有水晶体眼内レンズ手術の適応年齢21〜45歳、6D以上(3〜6D未満と15D超は慎重)、禁忌(浅前房・角膜内皮障害を追加)、術前検査に角膜内皮細胞検査と前眼部画像解析を追加、術後2時間以上の観察、術後合併症9項目。PDF原文を確認
- Larivoir E, et al. Efficacy and Safety of the V4c and V5 Implantable Collamer Lenses: Systematic Review and Meta-analysis. J Refract Surg. 2025;41(12):e1349-e135927研究・2,204眼。有効性指数1.103、安全性指数1.185、±0.5D以内87.45%、平均追跡13.84か月。PubMed抄録で確認
- Passaro ML, et al. Incidence of complications after posterior chamber phakic intraocular lens implantation: systematic review and meta-analysis. Am J Ophthalmol. 2026;285:73-82214研究・45,027眼。回転・偏位4.2、摘出3.1、網膜剥離0.4、黄斑浮腫0.3(各1,000人年あたり)。PubMed抄録で確認
- Kisiel MA, Gurumurthy S. Endothelial cell density loss after ICL V4c implantation: a meta-analysis. J Cataract Refract Surg. 2024;50(4):420-42318研究。内皮細胞減少3か月1.32%、12か月1.75%、21.25か月3.84%。PubMed抄録で確認
- Rodrigues Alves N, et al. IPCL versus ICL: systematic review and meta-analysis. J Cataract Refract Surg. 2026(DOI 10.1097/j.jcrs.0000000000002008)9研究・1,187眼。有効性指数1.05 vs 1.06、±0.5D以内83% vs 88%、白内障0.7% vs 0.8%、内皮細胞減少2.2%。PubMed抄録で確認
- 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、3施設)両眼427,000円(3年保証)、427,000円(中等度以上+76,500円/片眼、3年検診込)、530,000〜630,000円(乱視あり630,000〜730,000円、保証6か月〜1年)、乱視用+49,000〜50,000円/片眼。施設名は扱いません