低用量ピル(避妊目的)
効く薬です。飲み忘れで効かなくなり、まれに血栓で命を落とす。その2つを知って始める薬です。
正しく飲めば年間の妊娠率は0.3%、飲み忘れを含む一般的な使い方では9%です(米国CDC)。国内試験では924人・13,862周期で薬の効き目不足による妊娠はゼロ、飲み忘れによる妊娠が4例でした。まれに命に関わる血栓症が起こり、国内では2014年に月経困難症治療薬で3例の死亡が報告され「警告」が新設されました。
① 国内で承認されている使い方
トリキュラー、マーベロン、ファボワール、ラベルフィーユなどは「避妊」の効能で承認された医薬品です。避妊目的の処方は保険給付の対象外です。月経困難症で保険が使えるLEP(ルナベル、ヤーズ、ジェミーナなど)は、有効成分の組み合わせが同じでも効能が違う別の製品です。
② 臨床試験で確かめられていること
避妊効果は「完璧に飲めば99.7%、普通に飲むと91%」と要約できます。この差はすべて飲み忘れです。
国内試験では飲み忘れによる妊娠が4例、薬の効き目不足による妊娠は0例。飲み忘れ対策(毎日同じ時刻、アラーム、飲み忘れたときの手順)が効果を決めます。
月経痛や経血量の改善は、月経困難症の効能で承認されたLEPで示されている効果です。避妊用の製品に同じ効果があるとしても、承認された効能ではありません。
性行為感染症は防げません。
- 誰に
- 避妊を希望する日本人女性924例・13,862周期
- 何を
- トリキュラー(レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール)1日1錠
- 何と比べて
- 対照群なし(単群の観察)
- どうなった
- 飲み忘れによる妊娠4例。薬剤効果不十分による妊娠0例
- 誰に
- 米国の避妊法使用者の推計
- 何を
- 経口避妊薬(混合型・プロゲスチン単剤)
- 何と比べて
- 避妊なし、コンドーム、子宮内避妊具など
- どうなった
- 1年間の妊娠率: 経口避妊薬 一般的な使用9.0%/完璧な使用0.3%。避妊なし85%。男性用コンドーム18.0%/2.0%。銅付加IUD 0.8%/0.6%、レボノルゲストレルIUS 0.2%/0.2%
- 誰に
- 経口避妊薬を使う女性と、使わない非妊娠女性
- 何を
- 経口避妊薬の使用
- 何と比べて
- 非使用・非妊娠
- どうなった
- 静脈血栓塞栓症: 使用者1万人・年あたり3〜9例。非使用・非妊娠の女性1万人を1年追うと1〜5例。妊娠中・産後はさらに高い(添付文書は数値を示さず)
- 誰に
- 2010年11月の発売から2014年1月7日までのヤーズ服用者(推定使用187,000婦人年)
- 何を
- ヤーズ(ドロスピレノン・エチニルエストラジオール)。避妊用ピルとは効能・製品が異なりますが、同じくエストロゲンを含む配合剤
- 何と比べて
- 対照群なし(副作用報告の集計)
- どうなった
- 因果関係を否定できない血栓症による死亡3例(20歳代・投与7日・頭蓋内静脈洞血栓症/10歳代後半・投与526日・肺塞栓症/40歳代・約1年・肺塞栓症と下肢深部静脈血栓症)。3例とも喫煙なし。「警告」を新設
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 日本人の避妊用ピル服用者での血栓症の発生率。国内の数値は月経困難症治療薬の副作用報告に基づくもので、避妊用ピルの服用者全体を追跡した国内データを当サイトは確認していません。
- オンライン処方で禁忌の確認がどこまで行われているかの実態。
- 長期服用後に中止したときの妊孕性(妊娠のしやすさ)の回復期間の分布。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 35歳以上の喫煙者、肥満、前兆のある片頭痛、血栓症の家族歴、長時間の不動(長距離移動・手術後)。ただし国内の死亡3例は喫煙なし・BMI17〜24で、危険因子のない人にも起こります。
- 起こる時期
- 服用中いつでも。国内の死亡例は投与7日、526日、約1年と、時期はばらばらでした。
- 備え
- 下肢の急激な痛み・むくみ、突然の息切れ・胸痛、激しい頭痛、手足の脱力・しびれ・ろれつが回らない、急な視力障害。この症状が出たら服用をやめて救急へ。ブルーレターの2例は死亡前に医療機関を受診していましたが診断されませんでした。「ピルを飲んでいる」と必ず伝えてください。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。国内試験では悪心29.4%、乳房緊満感19.0%、頭痛15.0%、嘔吐10.5%。
- 起こる時期
- 飲み始めの数か月に多い。
- 備え
- 多くは続けるうちに軽くなるとされますが、頻度の推移は添付文書に示されていません。嘔吐で薬が吸収されないと避妊効果が落ちます。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。飲み忘れがあると出やすい。
- 起こる時期
- 飲み始めの数か月。
- 備え
- 続く場合は製剤の変更を相談。出血があっても自己判断で中止しないでください(避妊効果が切れます)。
- 起こりやすい人
- 毎日同じ時刻に飲めない生活の人。
- 起こる時期
- 飲み忘れの直後の周期。
- 備え
- 一般的な使用で年9%が妊娠します。飲み忘れたときの手順(何錠まで、何時間以内、追加の避妊が必要な期間)を処方時に確認してください。
- 起こりやすい人
- 35歳以上で喫煙する人(1日15本以上は禁忌)。
- 起こる時期
- 服用中。
- 備え
- 米国の添付文書は枠組み警告で「喫煙は重篤な心血管イベントのリスクを上げる。年齢と本数で増える」としています。禁煙できないなら別の避妊法を。
⑤ やめるとき
避妊したい期間中ずっとです。医学的な上限はなく、閉経まで続ける人もいます。ただし35歳以上の喫煙者など、年齢とともに禁忌に入る場合があります。
いつでもやめられます。離脱症状はありません。シートの途中でやめると不正出血が起こりやすく、避妊効果はすぐに失われます。
排卵が戻り、妊娠する可能性が戻ります。多くは数か月以内に月経周期が戻るとされますが、回復期間の分布を示した国内データを当サイトは確認していません。
月ごとの支払いです。まとめ買いの未使用分は返品できないのが通常です。手術や長距離移動の予定があるときは中止を勧められることがあり、その期間も費用は戻りません。
⑥ 価格
トリキュラー28は2,200円・2,500円・2,600円の3施設で、最安と最高で1.18倍。後発品のファボワール・ラベルフィーユは2,000円・2,300円・2,300円。別に初回の説明料・初診料が3,200〜3,300円の施設と、オンラインで「薬代と送料のみ」の施設がありました。血液検査(6か月に1度など)は別料金です。3施設の確認で相場ではありません。
避妊目的は保険給付の対象外で、薬価(公定価格)がありません。表示価格がすべてです。年額で考えると、1シート2,200〜2,600円×13シート=2万9千〜3万4千円に、診察料と検査料が加わります。「9+1」「6+1」のまとめ買いは単価が下がりますが、途中で製剤を変える必要が出たときに無駄になります。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 私に血栓症の危険因子(喫煙、年齢、片頭痛、家族歴、肥満、手術予定)がないか、処方前に確認してもらえますか。
- 飲み忘れたとき、何錠まで・何時間以内なら大丈夫で、いつまで別の避妊が必要ですか。
- 血液検査はいつ、何を、いくらで行いますか。
- 1シートの薬代のほかに、初診料・再診料・送料はいくらですか。年間の総額はいくらになりますか。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- トリキュラー錠28 添付文書(KEGG MEDICUS収載版で確認)効能「避妊」、禁忌(血栓性静脈炎・肺塞栓症・脳血管障害・冠動脈疾患の既往、35歳以上で1日15本以上の喫煙者、前兆を伴う片頭痛、重篤な肝障害)、重要な基本的注意の血栓症の症状、副作用頻度(悪心29.4%、乳房緊満感19.0%、頭痛15.0%、嘔吐10.5%)、臨床成績(924例・13,862周期、飲み忘れによる妊娠4例、薬剤効果不十分0例)、保険給付の対象外である旨
- U.S. Selected Practice Recommendations for Contraceptive Use, 2013. MMWR Recomm Rep. Appendix D: Contraceptive Effectiveness避妊法別の1年間の妊娠率(一般的な使用/完璧な使用): 経口避妊薬9.0%/0.3%、男性用コンドーム18.0%/2.0%、避妊なし85%。原典はTrussell J. Contraceptive Technology 20th ed. CDCのページで確認
- 米国FDA レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール配合錠 添付文書(Iclevia/Levora、openFDA drug label API、2026-09-05取得)静脈血栓塞栓症は使用者1万人・年あたり3〜9例、非使用・非妊娠女性で1〜5例。喫煙と心血管イベントの枠組み警告。禁忌一覧
- 安全性速報(ブルーレター)「月経困難症治療剤ヤーズ配合錠による血栓症について」2014年1月(13-02号、PDF)2010年11月16日〜2014年1月7日に因果関係を否定できない血栓症による死亡3例(推定使用187,000婦人年)。各症例の年齢・投与期間・死因・経過。血栓症が疑われる症状の一覧。「警告」新設。避妊用ピルとは製品・効能が異なる点に注意。PDF原文を確認
- 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、3施設)トリキュラー28 2,200円・2,500円・2,600円、マーベロン28 同額、ファボワール・ラベルフィーユ 2,000円・2,300円・2,300円、初診・説明料3,200〜3,300円またはオンラインで薬代+送料のみ。施設名は扱いません