膣レーザー(モナリザタッチ・膣の若返り)
「効いた」と「効いたと感じた」の差を、この施術ほどはっきり見せる例はありません。比べる相手を置いた瞬間に、効果は偽施術と同じになりました。
炭酸ガスやエルビウムのレーザーを膣の粘膜に当て、乾燥・性交痛・ゆるみ・尿もれの改善をうたう施術です。比較対照のない研究では9割が満足と報告される一方、偽の施術(レーザーを当てるふりをする)と比べた二重盲検試験では、12か月後の症状スコアの改善はレーザー−17.2点、偽施術−26.6点で差がなく(85人、JAMA 2021)、別の2試験(60人・72人)でも差はありませんでした。7つの二重盲検試験をまとめたレビューは「レーザーの有効性を支持しない」と結論しています。米国FDAは2018年に「膣の若返りに認可した機器はなく、やけど・瘢痕・性交痛・慢性痛の報告がある」と警告しました。国内未承認で、1回22,000〜60,500円、3回が1クールです。
① 国内で承認されている使い方
膣レーザー機器(モナリザタッチ=DEKA社、その他の炭酸ガス・エルビウムレーザー)は国内未承認で、医師が個人輸入して使う自由診療です。米国では、これらのレーザーは組織の切除・蒸散など別の目的で認可されており、FDAは「膣の若返りや更年期症状・尿失禁・性機能の治療目的で認可した機器はない」として2018年に警告し、7社に販売方法の是正を求めました。
② 臨床試験で確かめられていること
施術前後の比較では症状スコアが改善します。25研究のメタ解析で乾燥−5.15、性交痛−5.27(10点満点)。ただし「質は非常に低い〜低い」で、偽施術でも同じ程度改善します。
偽施術と比べると差が消えます。二重盲検の3試験(85人・60人・72人)はすべて差なし。偽施術群のほうが改善した項目もありました。
偽施術対照試験だけを集めたメタ解析でも結果は割れます。Khamis 2021(3試験164人)は有意差あり、Li 2026(9試験610人)は「ばらつきが大きく相当な不確実性」。長期(6か月超)の追跡がある無作為化試験は1つだけです。
膣エストロゲンと比べた7試験では、膣健康指数・性機能・排尿症状に有意差なし。つまり「エストロゲン並み」とも「エストロゲン以下」とも言えるデータです。
- 誰に
- 閉経後の膣症状がある女性85人(78人が完了)
- 何を
- 炭酸ガスフラクショナルレーザー3回(4〜8週間隔)
- 何と比べて
- 偽施術3回(機器を挿入するが照射しない)
- どうなった
- 12か月後の症状全体VAS: −17.2 vs −26.6(差9.4、95%CI −28.6〜47.5)。最も困る症状: −24.5 vs −20.4。膣症状質問票: −3.1 vs −1.6(差−1.5、−5.9〜3.0)。QOL・膣健康指数に差なし。有害事象16件 vs 17件(膣の痛み・不快感44% vs 68%)
- 誰に
- 中等症〜重症GSMの女性60人(Page、クロスオーバー)/アロマターゼ阻害薬を使う乳がん経験者72人(Mension)
- 何を
- 炭酸ガスレーザー3回(Page)/5回(Mension)
- 何と比べて
- 偽施術
- どうなった
- Page: 最も困る症状の重症度 12週で−23.6% vs −13.2%(p=0.13)、満足度・性機能・排尿・pH・膣健康指数に差なし。Mension: 性機能指数の改善 5.2 vs 7.9点(p=0.15)、性交痛・膣健康指数・pH・上皮の厚さに差なし。忍容性はレーザーで低い(p=0.007)
- 誰に
- 偽施術対照の無作為化試験3件164人(Khamis)/9件610人(Li)
- 何を
- 炭酸ガスレーザー(Li 2026は高周波・エルビウムも含む)
- 何と比べて
- 偽施術
- どうなった
- Khamis: 膣評価尺度 MD −0.49(−0.75〜−0.22)、性機能指数 +9.37、満足 RR 1.98。Li: 性機能指数の変化 +4.18/36(2.89〜5.47)、性交痛 −5.15だが「高い異質性とばらつきは相当な不確実性を示し、解釈に注意が必要」。PubMed抄録で確認
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
- 誰に
- GSMの女性302人(7つの無作為化試験、レーザー154人・エストロゲン148人)
- 何を
- 炭酸ガスフラクショナルレーザー
- 何と比べて
- 膣エストロゲン製剤
- どうなった
- 膣健康指数 MD 1.60(−0.36〜3.56、p=0.09)、性機能指数 MD 0.10(p=0.93)、排尿症状 MD −3.18(p=0.08)。いずれも有意差なし
- 誰に
- 膣・外陰部レーザーの114論文(うち無作為化試験15件)、安全性は51,094人
- 何を
- 炭酸ガス・エルビウムレーザー
- 何と比べて
- 偽施術・無治療・他治療
- どうなった
- 無作為化試験の半数は対照と差なし。「効果は研究の質が高いほど小さくなる」。6か月超の追跡がある無作為化試験は1件。有害事象は軽度・一過性で重篤なものは報告なし。「高品質の根拠が出るまで研究段階にとどめるべき」
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 「ゆるみ」「締まり」への効果。評価尺度がなく、試験で測られていません。
- 1年を超える長期の安全性(瘢痕・狭窄)。ほとんどの研究が短期です。
- 日本人での有害事象の集計。国内は未承認のため審査データがありません。
- 偽施術対照試験どうしで結果が割れる理由(施術回数・機種・評価時期)。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。
- 起こる時期
- 施術直後〜数日。
- 備え
- 3日間は性交を避ける指示が一般的。外陰部照射ではかさぶたが数日。
- 起こりやすい人
- 外陰部照射、萎縮の強い人。二重盲検試験でレーザー群の忍容性が低い。
- 起こる時期
- 施術中〜数日。
- 備え
- 麻酔クリームで軽減。強い痛みが続くなら受診。
- 起こりやすい人
- 出力設定、萎縮の強い粘膜、放射線治療歴。
- 起こる時期
- 直後〜数週間、瘢痕は数か月。
- 備え
- FDAが2018年の警告で挙げた重篤有害事象。性交痛の悪化として気づくことがあります。
- 起こりやすい人
- 傾向は確立していません。
- 起こる時期
- 数週間〜数か月。
- 備え
- FDAの警告に「繰り返す・慢性の痛み」。改善目的の施術で悪化した場合は、追加照射ではなく中止と婦人科受診。
- 起こりやすい人
- 受けたすべての人。
- 起こる時期
- 3回終了後。
- 備え
- 二重盲検試験で差なし。「効いた感じ」は偽施術でも同程度に起こります。追加照射を勧められたら根拠を聞いてください。
- 起こりやすい人
- 膣エストロゲンや骨盤底筋訓練・手術を受けていない人。
- 起こる時期
- 数か月〜。
- 備え
- 保険で受けられる治療を後回しにするコストです。
⑤ やめるとき
1か月ごとに3回が1クールで、その後「年1回のメンテナンス」を勧める施設が多い。維持照射の必要性を示すデータはありません(系統的レビューが「今後の課題」としています)。
いつでもやめられます。回数コースは特定商取引法の対象になる場合があります(皮膚のたるみ等の除去に該当するかは契約内容によります)。
偽施術と差がない以上、やめて失うものは示されていません。症状が続くなら婦人科で標準治療を。
1回払いが基本。コース契約は残回数の精算条件を確認。「効かなかったら追加」ではなく「効かなかったら中止」を先に決めてください。
⑥ 価格
A施設は膣内+外陰部36,300円(麻酔クリーム込み)、膣内のみ22,000円、外陰部のみ26,400円、別途再診料1,380円。B施設は膣内+外陰部60,500円、膣内のみ33,000円、表面麻酔2,200円。C施設は33,000円、2か月以内の2回目以降22,000円、施術のみの初診料4,200円。D施設は38,500円。同じ「膣内のみ」で最安と最高が1.5倍、「膣+外陰部」で1.7倍。月1回×3回が1クールで、その後は年1回の維持を勧める施設が多い。4施設の確認で、相場ではありません。
未承認機器で公定価格はなく、表示価格がすべてです。二重盲検試験で偽施術と差がない施術に、3回で7〜18万円、維持で年3〜6万円を払う構図です。比較対象は「保険の膣エストロゲン製剤(月数百〜千円台の自己負担)」です。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 私の症状(乾燥・性交痛・尿もれ)に、保険で受けられる標準治療(膣エストロゲン、骨盤底筋訓練、手術)を先に試さない理由は何ですか。
- 偽の施術と比べた二重盲検試験で差が出ていないことを、どう説明しますか。
- この機器は国内未承認で医師の個人輸入ですね。FDAが2018年に警告した有害事象(やけど・瘢痕・慢性痛)の説明を書面でもらえますか。
- 3回で効果がなかった場合、追加を勧めますか、それとも中止しますか。その基準は。
- 1回の価格に麻酔・再診料は含まれますか。3回の総額はいくらですか。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- Li FG, et al. JAMA. 2021;326(14):1381-138985人、二重盲検・偽施術対照、12か月。症状VAS −17.2 vs −26.6(差9.4、−28.6〜47.5)、有害事象16 vs 17件。PubMed抄録で確認
- Page AS, et al. BJOG. 2023;130(3):312-319/Mension E, et al. JAMA Netw Open. 2023;6(2):e2255697/Li FG, et al. Am J Obstet Gynecol. 2023;229(3):278.e1-278.e960人クロスオーバー(−23.6% vs −13.2%、p=0.13)、乳がん経験者72人(FSFI 5.2 vs 7.9、p=0.15)、組織学的検討49人(差なし)。PubMed抄録で確認
- Li FG, Abbott JA. Climacteric. 2025;28(4):414-422/Li FG, et al. J Minim Invasive Gynecol. 2026;33(1):81-937つの二重盲検試験はCO2レーザーの有効性を支持しない(性交痛16.3%改善、有意でない)。9試験610人のメタ解析は不確実性が大。PubMed抄録で確認
- Khamis Y, et al. Menopause. 2021;28(11):1316-1322/Pessoa LLMN, et al. Rev Bras Ginecol Obstet. 2024;46:e-rbgo38/Filippini M, et al. J Sex Med. 2022;19(3):452-470偽施術対照3試験(有意差あり)、12試験(VHI MD 2.21、確実性低)、25研究の前後比較(質は非常に低い〜低い)。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- Nasr AM, et al. J Sex Med. 2025;22(8):1409-1421レーザー vs 膣エストロゲン7試験302人。VHI・FSFI・UDI-6に有意差なし。PubMed抄録で確認
- Mortensen OE, et al. Acta Obstet Gynecol Scand. 2022;101(6):657-692/Bhide AA, et al. Int Urogynecol J. 2019;30(5):683-692/Iglesia CB, et al. Obstet Gynecol. 2024;144(2):181-194114論文の系統的レビュー(質が高いほど効果は小さい、研究段階にとどめるべき)、やけど・瘢痕・慢性痛の警告、ACOG専門家シリーズ(弱い根拠)。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- 米国FDA「FDA Warns Against Use of Energy-Based Devices to Perform Vaginal 'Rejuvenation' or Vaginal Cosmetic Procedures: FDA Safety Communication」2018年7月30日安全性と有効性は確立されていない、膣のやけど・瘢痕・性交時の痛み・慢性痛、膣の若返り目的で認可した機器はない、7社に是正要請。FDAの原ページは移設のため、ニュージーランドMedsafeの転載と報道で確認した二次資料
- 複数の婦人科・クリニック公開ページ(2026-09-05確認、4施設)36,300/22,000/26,400円+再診1,380円、60,500/33,000円+麻酔2,200円、33,000円(2回目以降22,000円)、38,500円。「国内未承認医薬品または薬事承認された使用目的とは異なる治療」「医師の判断のもと個人輸入」の注記を1施設で確認。施設名は扱いません