エムスカルプト(HIFEM・筋肉を鍛える痩身機器)
「寝ているだけで腹筋2万回」は宣伝としては正しい。論点は、2万回の収縮が生む変化が「数mm」であり、それが鏡に映るかどうかです。
強い磁場で筋肉を1回30分に約2万回収縮させる機器です。偽照射(5%出力)と比べた無作為化試験(72人、腹部、週1回3回)では、3か月後に超音波で脂肪の厚みが28.3%(7.6mm)減り、筋肉が24.2%(2.3mm)厚くなり、偽照射群は変化なしでした。一方、14研究の系統的レビューは、脂肪の減少が平均5.5mm、筋肉の増加が2.2mmで「治療効果は非常に小さい」とし、研究の多くが製造元の顧問による点を指摘しています。体重は減りません(−0.2kg)。国内未承認で医師の個人輸入ですが、「厚労省承認」と書く施設もあり、承認の有無の確認が必要です。1回10,000〜88,000円、4回で38,000〜308,000円と施設で8倍の差があります。
① 国内で承認されている使い方
エムスカルプト(BTL社)は高強度焦点式電磁(HIFEM)で筋肉を収縮させる機器で、後継のエムスカルプトNEOは高周波(RF)を同時に出します。米国では腹部の筋緊張の改善・腹筋の強化、臀部・大腿・上腕・下腿の引き締めなどの目的でFDA 510(k)クリアランスを得ています。日本では承認されておらず、医師の個人輸入で使われています。施設によって「未承認」と「厚労省承認」の記載が食い違うため、機器の製品名と承認番号を聞いてください。
② 臨床試験で確かめられていること
筋肉は厚くなります(2〜3mm)。運動で得られる変化と同じ方向で、機器が「効かない」わけではありません。
脂肪は薄くなります(5〜8mm)。ただし体重は変わらず、部分的な厚みの変化です。
見た目の変化は「写真で分かる程度」が多く、系統的レビューは「標準化されていない写真」「未治療部位の説明できない変化」を指摘しています。
効果は3〜6か月維持されますが、運動と同じく、続けなければ戻ると考えるのが自然です。維持照射の必要性を示すデータはありません。
- 誰に
- 腹部の引き締めを希望する72人(実照射48人・偽照射24人)
- 何を
- HIFEM+高周波(エムスカルプトNEO)、週1回×3回、最大出力
- 何と比べて
- 偽照射(5%出力)
- どうなった
- 3か月後(超音波): 脂肪厚−28.3%(7.6±3.7mm)、筋肉厚+24.2%(2.3±0.9mm)。1か月後は−20.5%/+21.5%。偽照射群は有意な変化なし。6か月まで維持。有害事象なし
- 誰に
- 22人
- 何を
- HIFEM(エムスカルプト)4回
- 何と比べて
- 対照群なし(治療前との比較)
- どうなった
- 2か月後: 脂肪厚−18.6%、腹直筋厚+15.4%、腹直筋離開−10.4%(p<0.0001)、臍下周囲径−3.8cm、体重−0.5ポンド(有意でない)。6か月で維持。BMI正常で効果大
- 誰に
- 14の臨床研究(腹部・側腹・臀部・大腿・上腕・下腿)
- 何を
- HIFEM
- 何と比べて
- 研究ごとの対照(多くは対照なし)
- どうなった
- 脂肪厚−5.5mm、筋肉厚+2.2mm、腹直筋離開−2.9mm(平均)。「有効性の根拠は薄弱。測定された治療効果は非常に小さい(<5mm)」。研究の多くは製造元の顧問が著者で利益相反を指摘
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
- 誰に
- 15研究(エムスカルプト11・NEO2)/NEOの7研究
- 何を
- HIFEM/HIFEM+高周波、標準は4回(2〜4週)
- 何と比べて
- 研究ごとの対照
- どうなった
- Kohan: 腹部で脂肪−5.5mm・筋肉+2mm、全研究で満足度高い、有害事象なし、背景因子の未報告あり。Swanson 2025: 脂肪−8.0mm・筋肉+5.5mm、「7研究すべてがBTLの顧問による」「臨床的に意味のある結果の信頼できる根拠は得られない」。PubMed抄録で確認
この数値はレビュー論文を通じて確認したものです。原著論文そのものの確認は済んでいません。
※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。
③ まだ答えの出ていないこと
- 製造元と無関係の研究者による偽照射対照試験。現在の1件(Samuels 2022)も製造元との関係が抄録に明記されていません。
- 数mmの変化が、写真や本人の見た目でどの程度分かるか(臨床的に意味のある最小変化)。
- 運動(同じ時間の筋トレ)との直接比較。
- 日本人での効果と安全性。国内は未承認で審査データがありません。
④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え
添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。
- 起こる時期
- 当日〜翌日以降数日。
- 備え
- 運動後と同じ性質です。
- 起こりやすい人
- 誰にでも。
- 起こる時期
- 直後。
- 備え
- 数時間で引きます。
- 起こりやすい人
- 植込み型電子機器、金属インプラント、妊娠中、てんかんの既往、心疾患。
- 起こる時期
- 施術中。
- 備え
- 施設の禁忌リストで自分に該当がないか確認。該当すれば受けられません。
- 起こりやすい人
- 皮下脂肪が厚い人、体重減少を期待した人。
- 起こる時期
- 4回終了後1〜3か月。
- 備え
- 変化は数mmです。体重は減りません。
- 起こりやすい人
- 受けたすべての人。
- 起こる時期
- 3〜6か月後〜。
- 備え
- 維持照射を勧められますが、必要性のデータはありません。
⑤ やめるとき
4回(週1〜2回)が1クール。その後「月1〜2回の維持」を勧める施設がありますが、維持照射の必要性を示すデータはありません。
いつでもやめられます。回数コースは特定商取引法の特定継続的役務(脂肪の減少で1か月超・5万円超)に当たれば中途解約できます。
運動と同様、続けなければ筋肉は元に戻ると考えられます。6か月までは維持されたという報告があります。
コース契約の残回数の精算方法を契約前に確認。「お試し価格」の後に高額コースを勧められる構図に注意。
⑥ 価格
A施設は1回33,000円・4回99,000円(2026年7月改定)。B施設は腹部または臀部1回33,000円。C施設は1回88,000円・4回308,000円(初回限定120,000円)、4〜10回を推奨。D施設は4回160,000円。E施設はお試し10,000円・4回38,000円(初診1,100円・再診550円別)、週2回×4週の計8回を推奨。4回コースで最安と最高が約8倍。推奨回数も4回から8〜10回まで施設で異なり、総額はさらに開きます。5施設の確認で、相場ではありません。
未承認機器で公定価格はなく、表示価格がすべてです。同じ機器で8倍の差がつく施術は、価格が機器の価値を表していません。「4回」の定義(1部位か、腹部+臀部か)と推奨回数を揃えて比べてください。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。
⑦ 診察で聞くこと
そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。
- 使う機器の製品名と、国内承認の有無(承認番号)を教えてください。未承認なら個人輸入である旨の説明を書面でもらえますか。
- 試験で示された効果は「脂肪の厚み5〜8mm減、筋肉2〜3mm増、体重は変わらず」です。私の場合に見た目で分かる変化を期待できますか。
- ペースメーカー・金属・妊娠・てんかん・心疾患の確認をしましたか。
- 4回コースの価格に初診料・再診料は含まれますか。効果がなかったときの追加照射は勧めますか。
関連する読みもの
出典
最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。
- Samuels JB, Katz B, Weiss RA. Plast Reconstr Surg. 2022;149(5):893e-900e72人、偽照射(5%出力)対照。3か月で脂肪−28.3%(7.6mm)、筋肉+24.2%(2.3mm)。PubMed抄録で確認
- Kinney BM, Lozanova P. Lasers Surg Med. 2019;51(1):40-46/Kent DE, Jacob CI. J Drugs Dermatol. 2019;18(11):1098-110222人MRI(脂肪−18.6%、筋肉+15.4%、体重−0.5ポンド)、22人CT(脂肪−17.5%、筋肉+14.8%、腹囲−3.9cm)。対照なし。PubMed抄録で確認
- Swanson E. Ann Plast Surg. 2023;90(2):180-188/Swanson E. Ann Plast Surg. 2025;94(2):250-25614研究(脂肪−5.5mm・筋肉+2.2mm、根拠は薄弱、製造元顧問が著者)、NEO7研究(すべてBTL顧問、信頼できる根拠なし)。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- Kohan J, et al. Aesthetic Plast Surg. 2024;48(6):1156-116515研究の系統的レビュー。腹部で脂肪−5.5mm・筋肉+2mm。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い
- Alexiades M. J Drugs Dermatol. 2019;18(11):1088FDAの使用目的(腹部の筋緊張改善・腹筋強化、臀部・大腿・下腿の引き締め)の記載。PubMed抄録で確認したため二次資料扱い(FDA文書本体は未確認)
- 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、5施設)33,000円/4回99,000円、33,000円、88,000円/4回308,000円、4回160,000円、お試し10,000円/4回38,000円。「未承認医療機器・医師等の個人輸入」の注記を1施設で、「厚生労働省承認」の記載を2施設で確認(食い違い)。施設名は扱いません