自由診療の料金・リスク・根拠を、受ける前に。医院レポート5院 · 資料確認 2026-09-21
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全身・体重

脂肪吸引

別の言い方: ベイザー/VASER/脂肪吸引 太もも/脂肪吸引 お腹/脂肪吸引 二の腕/顔の脂肪吸引/あご下 脂肪吸引/部分痩せ 手術

部分的に細くなる手術です。体重を減らす手術でも、健康になる手術でもなく、戻ってくる脂肪は別の場所に付きます。

結論 ── うたわれている効果は
脂肪は減ります。ただし体重も健康指標も変わらず、まれに命を落とします

吸った部位の皮下脂肪は確実に減ります。しかし9〜10kgの脂肪を吸ってもインスリン感受性・血圧・脂質は変わらず(NEJM 2004)、1年後には体脂肪が戻って別の部位に付きました(無作為化試験 2011)。合併症は2.6%で輪郭の凹凸が最多、米国の24.6万例で21人が死亡し、日本でも2023年に顔の脂肪吸引の翌日に窒息死した例が消費者庁に報告されています。

1肥満の女性15人で平均9.1〜10.5kgの皮下脂肪を吸引しても、筋肉・肝臓・脂肪組織のインスリン感受性、血圧、血糖、脂質は有意に変わりませんでした(NEJM 2004)。「痩せて健康になる」手術ではありません。
2健康な女性32人を脂肪吸引群と対照群に無作為に分けた試験で、6週後に減った体脂肪は1年後に戻り、太ももで減った分が腹部に再分布しました(Obesity 2011)。
339研究・29,368人のメタ解析で合併症は2.62%(95%CI 1.78〜3.84)。最多は輪郭の変形2.35%、次いで色素沈着1.49%、漿液腫0.65%、血腫0.27%。静脈血栓塞栓症は0.017%でした。
4米国の認定外来手術施設24.6万例(2019〜2021年)で合併症0.40%、死亡21例。日本では2023年4月、顔の脂肪吸引の翌日に気道閉塞による窒息で死亡した事故が消費者庁の重大事故として公表されました。
エビデンスの水準
★★
脂肪は減る・体重と健康指標は変わらない
承認の状況
手術(保険適用なし)
価格の幅
腹部(上下)31〜67万円/二の腕15〜43万円/太もも全体43〜86万円(3施設・税込)
部位ごとの表示価格(税込)。麻酔代・システム代は別のことが多い

① 国内で承認されている使い方

脂肪吸引は外科手術で、医師が行う医行為です。使う機器(超音波併用のベイザー、水流のボディジェットなど)は製品ごとに薬機法上の位置づけが異なります。保険は適用されません。日本美容外科学会(JSAPS)などの「美容医療診療指針」(2021年改訂)には脂肪吸引そのもののCQは設けられておらず、脂肪注入による豊胸のCQの中で吸引手技に触れているにとどまります。

対象
国内での承認
脂肪吸引(手術)
医行為。保険適用なし
ベイザー(VASER)など超音波・水流併用の機器
機器ごとに承認・届出の状況が異なる。製品名を聞けばPMDAで確認できる
静脈麻酔・全身麻酔
麻酔科医が管理するか、執刀医が兼ねるかで安全性が変わる。誰が麻酔を管理するかを確認
—「体重が◯kg減る」「代謝が上がる」という案内は、試験で否定されています。皮下脂肪の一部を機械的に取り除くだけで、内臓脂肪や代謝は変わりません。
—顔・あご下の脂肪吸引は、術後の腫れが気道を圧迫することがあります。2023年の死亡例はこの部位でした。翌日に医師が直接診察するかどうかを確認してください。
—複数部位の同時手術や大量吸引は、脂肪塞栓・静脈血栓のリスクを上げるとされます。1回の吸引量の上限を施設がどう決めているかを聞いてください。

② 臨床試験で確かめられていること

吸った部位の脂肪が減ることは、測るまでもなく確かです。争点は「それで何が変わるか」と「何と引き換えか」です。

健康指標は変わりません。9〜10kgの脂肪除去でもインスリン感受性・血圧・脂質は動きませんでした。内臓脂肪ではなく皮下脂肪を取るからです。

体脂肪は1年で戻ります。無作為化試験では、太ももで減った分が腹部に付き直しました。手術は脂肪細胞の数を減らしますが、残った細胞は太ります。

見た目の満足度を測った無作為化試験を、当サイトは確認していません。効果の「大きさ」は、体重でも周囲径でも、施設の写真でしか示されていないのが実態です。

脂肪吸引は代謝・血圧・脂質を改善するか(米国)Klein S, et al. Absence of an effect of liposuction on insulin action and risk factors for coronary heart disease. N Engl J Med. 2004;350(25):2549-2557
誰に
肥満の女性15人(耐糖能正常8人、2型糖尿病7人)
何を
大量の腹部脂肪吸引(除去した脂肪は平均9.1±3.7kg/10.5±3.3kg)
何と比べて
手術前との比較(対照群なし)
どうなった
筋肉・肝臓・脂肪組織のインスリン感受性は有意に変化せず。血圧、血糖、インスリン、脂質も変わらず
吸った脂肪は戻るか(無作為化試験・米国)Hernandez TL, et al. Fat redistribution following suction lipectomy: defense of body fat and patterns of restoration. Obesity. 2011;19(7):1388-1395
誰に
健康な女性32人(脂肪吸引14人、対照18人、平均36歳)
何を
太もも・腹部などの脂肪吸引
何と比べて
手術をしない対照群
どうなった
体脂肪率の変化: 6週後 −2.1% vs −0.28%。1年後 −0.41% vs +0.59%で有意差なし。太ももは減ったまま(−1.83%)、腹部は両群で同様に増加。著者の結論「体脂肪は回復し、太ももから腹部へ再分布した」
合併症の頻度(メタ解析)Comerci AJ, et al. Risks and Complications Rate in Liposuction: A Systematic Review and Meta-Analysis. Aesthet Surg J. 2024;44(7):NP454-NP463
誰に
39研究・29,368人
何を
脂肪吸引(方法はさまざま)
何と比べて
対照群なし(頻度の統合)
どうなった
何らかの合併症2.62%(95%CI 1.78〜3.84)。輪郭の変形2.35%、色素沈着1.49%、漿液腫0.65%、血腫0.27%、感染0.020%、静脈血栓塞栓症0.017%
外来手術施設24.6万例の合併症と死亡(米国)Valentine L, et al. Liposuction Complications in the Outpatient Setting: A National Analysis of 246,119 Cases in Accredited Ambulatory Surgery Facilities. Aesthet Surg J Open Forum. 2024;6:ojad107
誰に
米国の認定外来手術施設で2019〜2021年に脂肪吸引を含む手術を受けた246,119例
何を
脂肪吸引を含む手術
何と比べて
対照群なし(登録データの集計)
どうなった
合併症0.40%(984例)。死亡21例。合併症の24%は予定外の救急受診。静脈血栓塞栓症はBMIの高い人に多い(中央値30.1)

※ 別々の試験の数値を並べています。試験ごとに対象者・期間・条件が異なるため、本来、数値同士を直接比べることはできません。それを承知のうえで、目安として並べています。

③ まだ答えの出ていないこと

④ 副作用 ── 起こりやすい人・起こる時期・備え

添付文書と臨床試験の報告に基づきます。頻度や重さはあなたの条件で変わります。ここに無い症状が出たときも、処方元に連絡してください。

手術中〜当日翌日〜1週間数週間〜数か月半年〜1年気道閉塞(顔・あご下の手術後の腫れ)脂肪塞栓・静脈血栓塞栓症出血・血腫感染漿液腫(体液がたまる)輪郭の変形・凹凸色素沈着・皮膚の感覚異常脂肪の再分布よくある重大(まれでも見逃さない)
図|副作用の起こる時期のめやす。下の各項目の「起こる時期」の記述を、当サイトが図にした定性的な整理です。幅には個人差があり、この図の外で起こることもあります。頻度の大小を示すものではありません。麻酔の合併症は麻酔法によって異なるため図に入れていません。誰が麻酔を管理するかを聞いてください。出典: 添付文書・臨床報告(詳細は下の各項目と出典欄)/加工: あり(時期の記述の図示)
気道閉塞(顔・あご下の手術後の腫れ)重大
起こりやすい人
顔・あご下・首の脂肪吸引を受けた人。
起こる時期
手術当日〜翌日。
備え
2023年の国内死亡例は、翌日に体調不良で受診したのち自宅で窒息しました。息苦しさ、首の腫れ・変色、痰が出せない、は救急です。翌日に執刀医が直接診る体制かを確認してください。
脂肪塞栓・静脈血栓塞栓症重大
起こりやすい人
大量吸引、複数部位の同時手術、BMIの高い人、長時間手術。
起こる時期
手術中〜数日。
備え
呼吸困難、胸痛、意識の変化は救急です。24.6万例の解析では静脈血栓塞栓症はBMIの高い人に集中していました。
出血・血腫重大
起こりやすい人
抗凝固薬・サプリ(血を固まりにくくするもの)を使っている人、吸引量の多い人。
起こる時期
手術中〜1週間。
備え
メタ解析で血腫0.27%。急な腫れの増大、めまい、動悸は受診を。2024年には顔の脂肪吸引後の出血による死亡が国内で報道されています(当サイトは一次資料未確認)。
感染重大
起こりやすい人
糖尿病、喫煙者、術後管理の不十分な場合。
起こる時期
数日〜数週間。
備え
メタ解析では0.020%とまれですが、発熱・赤み・膿が出たら受診を。
漿液腫(体液がたまる)よくある
起こりやすい人
広い範囲を吸引した人。
起こる時期
数日〜数週間。
備え
0.65%。圧迫ガードルの着用期間を守る。たまった場合は穿刺で抜きます。
輪郭の変形・凹凸よくある
起こりやすい人
誰にでも。皮膚のたるみやすい人、吸引量の多い部位。
起こる時期
数週間〜数か月(腫れが引いてから分かる)。
備え
最多の合併症(2.35%)で、直すには修正手術が要ります。修正の費用と条件を契約前に確認してください。
色素沈着・皮膚の感覚異常よくある
起こりやすい人
誰にでも。
起こる時期
数週間〜数か月。
備え
色素沈着1.49%。しびれは多くが数か月で改善するとされますが、残ることもあります。
脂肪の再分布よくある
起こりやすい人
受けたすべての人。
起こる時期
半年〜1年。
備え
減った分は別の部位に戻ります。太ももを吸うと腹部に付く、というのが無作為化試験の結果です。

⑤ やめるとき

いつまで続けるのか

1回の手術で完結します。ただし複数部位を分けて手術する提案や、修正手術で回数が増えることがあります。

途中でやめられるか

手術前ならやめられます。手術後は元に戻せません。吸引した脂肪細胞は戻りませんが、残った細胞は太ります。

やめたらどうなるか

体脂肪は1年で元の水準に戻り、別の部位に再分布します。吸った部位の輪郭の変化は残りますが、体重を維持しなければ全体の見た目は戻っていきます。

お金はどうなるか

1回払いが基本です。手術前のキャンセル料、修正手術の費用・期限、合併症の治療費の負担を契約書で確認してください。美容医療の手術は特定商取引法の中途解約の対象外のことが多く、契約前の確認がすべてです。

⑥ 価格

腹部前面(上下腹部)は307,980円・385,000円(別にシステム代113,850円)・320,000〜670,000円。二の腕は145,200円・308,000円・430,000円。太もも全体は425,340円・495,000円・430,000〜860,000円。最安と最高で2〜3倍で、方法(超音波併用など)と、麻酔代・システム代・ガードル代を含むかどうかで総額が大きく変わります。静脈麻酔31,900円の別料金の施設がありました。3施設の確認で相場ではありません。

手術に薬価にあたる公定価格はありません。表示価格がすべてです。部位単価より「全部込みの総額」と「修正手術の条件」で比べてください。「脂肪の量で金額が増える」と明記する施設があり、診察後に見積もりが変わることがあります。観測日2026-09-05、施設名は扱いません。

⑦ 診察で聞くこと

そのまま読み上げられる形にしています。答えをはぐらかされた質問は、それ自体が判断の材料になります。

  1. 手術の翌日に、執刀医が直接診察しますか。夜間に息苦しさや腫れが出たとき、誰にどう連絡しますか。
  2. 1回の手術で吸引する量と部位数の上限を、どう決めていますか。
  3. 麻酔は何を使い、誰が管理しますか。麻酔科医はいますか。
  4. 表示価格のほかに、麻酔代・システム代・血液検査・ガードル代・修正手術の費用はいくらですか。
  5. 輪郭の凹凸が残った場合、修正はいつまで・いくらで受けられますか。

関連する読みもの

出典

最終確認日 2026-09-05/内容をあらためたときは訂正の記録に残します。

  1. Klein S, Fontana L, Young VL, et al. Absence of an effect of liposuction on insulin action and risk factors for coronary heart disease. N Engl J Med. 2004;350(25):2549-2557肥満女性15人。9.1〜10.5kgの脂肪除去でインスリン感受性・血圧・血糖・脂質は不変。PubMed抄録で確認
  2. Hernandez TL, et al. Fat redistribution following suction lipectomy: defense of body fat and patterns of restoration. Obesity (Silver Spring). 2011;19(7):1388-139532人の無作為化試験。1年後に体脂肪は回復し、太ももから腹部へ再分布。PubMed抄録で確認
  3. Comerci AJ, et al. Risks and Complications Rate in Liposuction: A Systematic Review and Meta-Analysis. Aesthet Surg J. 2024;44(7):NP454-NP46339研究・29,368人。合併症2.62%、輪郭変形2.35%、色素沈着1.49%、漿液腫0.65%、血腫0.27%、感染0.020%、静脈血栓塞栓症0.017%。PubMed抄録で確認
  4. Valentine L, et al. Liposuction Complications in the Outpatient Setting: A National Analysis of 246,119 Cases in Accredited Ambulatory Surgery Facilities. Aesthet Surg J Open Forum. 2024;6:ojad107米国の認定外来手術施設2019〜2021年。合併症0.40%、死亡21例。Europe PMCの抄録で確認
  5. 消費者庁「消費者安全法の重大事故等に係る公表について」令和5年5月11日(PDF)管理番号F1230502-02。令和5年4月29日発生、医療サービス(脂肪吸引)、死亡1名、大阪府。「美容外科において、顔の脂肪吸引の施術の翌日、利用者が体調不良により病院を受診したが、その後、自宅において、気道閉塞を原因とする窒息による死亡が確認された」。警察庁からの通知。PDF原文を確認
  6. 美容医療診療指針(令和3年度改訂版)日本美容外科学会会報 Vol.44 特別号(PDF)5学会合同・厚労科研の指針。CQの一覧に脂肪吸引単独のCQはなく、脂肪注入による乳房増大のCQ(3-3-1、3-3-2)で吸引手技に言及。PDF原文のCQ一覧を確認
  7. 複数のクリニック公開ページ(2026-09-05確認、3施設)腹部前面307,980円・385,000円(+システム代113,850円)・320,000〜670,000円、二の腕145,200円・308,000円・430,000円、太もも全体425,340円・495,000円・430,000〜860,000円、静脈麻酔31,900円。施設名は扱いません